浮気・不倫で離婚する場合の流れと9つの注意点
不貞慰謝料
目次
- 1.不倫・浮気で離婚できる?
- 2.不貞行為による離婚手続き
- 2-1.不倫された側
- 2-1-1.協議離婚
- 2-1-2.離婚調停
- 2-1-3.離婚裁判
- 2-2.不倫した側
- 2-2-1.協議離婚
- 2-2-2.離婚調停
- 2-2-3.離婚裁判
- 3.不倫慰謝料の請求
- 3-1.不倫慰謝料の相場
- 3-2.不貞慰謝料または離婚慰謝料として請求
- 4.不倫で離婚する場合の注意点
- 4-1.不倫の証拠(手続の問題)
- 4-2.夫婦をやり直したい(夫婦の問題)
- 4-3.不倫した配偶者が親権者になれるか(子供の問題)
- 4-4.不倫した配偶者からの養育費請求(子供の問題)
- 4-5.不倫した配偶者からの財産分与(お金の問題)
- 4-6.別居中の不倫(お金の問題)
- 4-7.別居中の生活費(お金の問題)
- 4-8.ダブル不倫の離婚(お金の問題)
- 4-9.不倫相手との再婚(離婚後の生活)
- 5.まとめ
1.不倫・浮気で離婚できる?
夫や妻の不倫、浮気が発覚したとき、配偶者としては①離婚、②慰謝料の請求、③夫婦関係を続ける、やり直すということが考えられます。
不倫・浮気といった言葉は、ひとそれぞれに意味や定義は異なります。
たとえば、配偶者以外の肉体関係をもつことを不倫。
未婚者を含めて、配偶者やパートナー以外とのデートなどをすることを浮気と呼ぶことがあります。
①離婚、②慰謝料を法的におこなうためには、「不貞行為」に当たるかどうかがポイントになります。
不貞行為とは、法律用語で「婚姻関係にある配偶者は異性と性交渉、性交類似行為をおこなうこと」を言います。
なお、事実状の婚姻状態である内縁関係や、結納や結婚式場を予約するなど婚約しているパートナーの場合にも、不貞行為が成立する可能性があります。
【ピックアップ】 同性間の不倫も不貞行為になる可能性があります。
2021年2月16日、東京地方裁判所の判決では「不貞行為」の定義を「配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」として、同性間の不倫も「配偶者以外の者」にあたるとして慰謝料請求を認めました。
これまで異性間の不倫を不貞行為とする考え方が一般的でしたが、近年性的マイノリティの議論にともない、今後は同性間との性的関係も不貞行為にあたる可能性は高まっています。
次の項目からは、配偶者として取れる3つの行動について解説します。
2.不貞行為による離婚手続き
不貞行為は、法律上の離婚原因のひとつに該当します。
つまり、不貞行為を原因に離婚請求は可能です。
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2.裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
裁判で離婚を求める場合、法律(民法770条)における離婚原因があることが必要です。
夫婦双方が離婚することに合意できれば、離婚届を市区町村の役所に提出すれば離婚は成立します。
しかし、離婚条件の合意や、離婚することに合意できない場合には裁判所の離婚調停や裁判(訴訟)を利用し解決します。
なお、離婚の多くは話し合いで解決されています。
2-1.不倫された側
不倫された側の配偶者としての離婚手続きの手順について解説します。
2-1-1.協議離婚
離婚の話し合いを「離婚協議」と言います。
離婚協議では、離婚の合意はもとより、離婚条件をしっかり決めましょう。
決めるべき離婚条件は次のとおりです。
参照│離婚にあたって決めておくべき9つの離婚条件 | |
---|---|
離婚条件 | 内容 |
財産分与 | 婚姻期間中に夫婦が協力して築いた共有財産の分け方を決めます。 |
慰謝料 | 不貞慰謝料請求ではなく、離婚手続の中で不貞行為による夫婦関係の破綻や精神的苦痛として離婚慰謝料を請求することができます。 |
年金分割 |
婚姻期間中の保険料納付額に対する厚生年金記録を当事者間で分割します。 離婚で自動的に分割されるわけではありません。 離婚成立の翌日から2年を経過すると請求権が消滅します。 |
住宅ローン |
① オーバーローン(売却後にローンが残る)場合、ローンの支払いをどうするか考えます。 ② アンダーローン(売却で利益が出る)場合、売却後に財産分与や離婚慰謝料の代わりに自宅をもらう、といったことが考えられます。 ②の場合、具体的には夫から妻への所有権移転登記はローン債務の完済後にすることとし、離婚時には、夫から妻への所有権移転請求権保全の仮登記をつけておくことが考えられます。 |
借金、ローンの返済 |
基本的には借り入れ名義人の負債となり、離婚後も名義人が返済します。 夫婦双方の生活のために一方の名義で借り入れ をしていた場合、資産から当該負債を差し引くなどして調整します。 |
親権者 | 未成熟子がいる場合、親権者を定めなくてはいけません。 なお、不倫をした配偶者であっても親権者となることができます。 |
面会交流 |
未成熟子と離婚後の面会条件を決めます。 面会交流は子供の健やかな成長のためのものであり、子供にとっての権利です。 たとえ不倫をした配偶者から求められた面会交流であったとしても、拒否することは難しいと言えます。 |
養育費 |
毎月の養育費の金額は、家庭裁判所の養育費の算定表を利用することが多いと思います。 不倫をした配偶者からの養育費請求を拒否することはできません。養育費は子供にとっての権利です。 なお、次の記事で不倫した配偶者が親権者となる場合の養育費請求の問題について解説しています。 |
婚姻費用 |
離婚前にした別居時の生活費です。収入が高い方から低い方に支払います。 ただ、婚姻費用のうち養育費部分が認められます。 そのため、別居中の婚姻費用に養育費が含まれていることから、不倫をした配偶者が未成熟子を連れて別居している場合において、婚姻費用の請求を拒否することは難しいです。 |
協議離婚が成立した場合、公正証書で作成しておくと良いでしょう。
慰謝料、養育費など未払いになった際に、裁判をすることなく、すぐに強制執行をおこなうことができます。
離婚協議で離婚が成立しない場合、調停手続で解決をはかります。
日本では、離婚に関する裁判手続きでは、まずは調停をおこなうことになっています(調停前置主義)。
2-1-2.離婚調停
家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停手続は、離婚裁判とは異なり、調停委員を交えた話し合いです。
夫婦が別の控室で待機し、交互に呼び出しを受けて調停委員や裁判官と話をします。
そのため相手方と顔を会わせることはありません。
この調停手続においても、先ほど挙げた離婚条件についてしっかりと定めておきます。
調停でも離婚合意が難しい場合、調停不成立として手続きは終了します。
反対に、離婚に合意ができた場合、調停成立となり「調停調書」と呼ばれる書面が裁判所にて作成されます。
この調停調書を添えて、調停成立日を含めて10日以内に離婚届を提出します。
提出先は、夫婦の本籍地、または申立人の所在地または居所(住民票を移していない場合)のある市区町村役場となります。
なお、離婚調停不成立の際に、「離婚させた方が良い」と裁判所の判断した場合に離婚審判と呼ばれる手続に自動で移行することがあります。
審判に移行するのは、離婚することに合意しているものの、それ以外の些細なことで調停成立しなかった場合などです。
裁判所が、審判という形で判断を下しますが、これに夫婦一方から異議申立てがあった場合には、審判の効力が失われます。
そのため、審判離婚が成立することは少ないです。
2-1-3.離婚裁判(離婚訴訟)
離婚調停が不成立で終了した場合、離婚裁判を提起するかを検討します。
再度、相手方に離婚協議による話し合いで解決を求めることもできます。
なお、離婚調停が不成立になった時から2週間以内に、離婚裁判を起こした場合には離婚調停で納めた手数料相当額を差し引いて訴訟を起こすことができます。
離婚裁判は、裁判官の判断を求めて争う訴訟です。
主張や証拠を示して、最終的に裁判官の判断(判決)を仰ぎます。
なお、訴訟の中で、裁判所から和解案の提示を受けることがあります。
そのため、判決だけが解決方法ではありません
離婚裁判は、①直接相手と向き合う、②専門的な手続き、進行となるため、弁護士に依頼することも検討しましょう。
弁護士費用がかかるというデメリットはありますが、代理交渉や裁判例やノウハウに基づくサポートによる適切な解決が期待できます。
また、精神的な負担、事務手続の負担をかなり軽減することができます。
2-2.不倫した側
不倫をした側の対応や手順を解説します。
2-2-1.協議離婚
不倫した側の配偶者としては、相手方に納得してもらい、極力話し合いによる離婚成立を目指します。
話合いによる離婚は、裁判よりも離婚条件が緩やかな内容で合意できる可能性があります。
離婚協議、調停離婚は基本的に話し合いであるため、不倫をした配偶者から離婚について話を持ちかける、調停申立てをおこなうことは可能です。
なお、離婚協議、離婚調停で離婚に合意できない場合、離婚裁判へと進みます。
しかし、離婚裁判では、不倫をした側の配偶者からの離婚請求は難しいと言えます(原則として、法定離婚事由を作り出した有責配偶者からの離婚裁判の提起は認められません)。
2-2-2.離婚調停
話し合いで解決できない場合、調停で離婚を求めることもできます。
不倫をした配偶者であっても、財産分与を求めること、未成熟子がいる場合には養育費の支払いや面会交流を求めること、親権者になることは可能です。
ただ、実務上では、不倫による慰謝料額を踏まえて、財産分与がされることもあります。
都合よく、お金や権利を獲得することはできず、調停手続きを通して調整をはかっていくことになります。
2-2-3.離婚裁判(離婚訴訟)
不倫をした配偶者が、調停不成立後に離婚裁判を起こすことは難しいです。
原則として離婚原因を作り出した有責配偶者からの離婚請求は、裁判所に請求棄却される可能性が高いからです。
ただ、性格の不一致など「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」として離婚裁判を提起することもが考えられます。
なお、有責配偶者から離婚請求が認められた最高裁の裁判例があります。(最高裁昭和62年9月2日判決)
この裁判例では、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合として次の3つの要件を挙げています。
有責配偶者から離婚請求が認められた最高裁の裁判例
- 別居期間が両当事者の年齢及び同居期間と比べて相当の長期間
- 未成熟の子がいない
- 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚を認めることが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情が認められないこと
(最高裁昭和62年9月2日判決)
そのため、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性もあります。
次は、不倫した際に問題となる「慰謝料」について解説します。
3.不倫慰謝料の請求
不貞行為は、警察が関与するような刑事事件に当たるものではありません。
しかし、「平穏で円満な婚姻関係を破綻させたことによる精神的苦痛」や「夫婦間の貞操義務違反」にあたる不法行為(権利の侵害)の被害者として民事上の賠償請求をおこなうことができます。
3-1.不倫慰謝料の相場
不貞行為による慰謝料額の相場は次のとおりです。
この相場は離婚裁判における基準ですが、離婚協議、離婚調停でも参考にすることが多いです。
不貞慰謝料の裁判上の相場 ( 裁判で積み重ねられた基準 ) | |
---|---|
不倫(浮気)により離婚する場合 | 100万円~300万円 程度 |
離婚せず、別居しない場合 |
数十万円~100万円 程度 |
離婚せず、別居する場合 |
100万円~150万円 程度 |
なお上記基準ではなく、双方が自由に金額を提示し、合意できた場合にはその金額が慰謝料となります。
また、慰謝料額の増額・減額に影響を与える要素として、婚姻期間、子供の有無、不貞行為の程度、反省の有無などがあります。
慰謝料の相場について、次の関連記事でもくわしく解説しています。
参考記事
なお、不倫をされた配偶者が、相手配偶者や不倫相手に過大な金額を請求すると、話し合いが進まない可能性が高くなるので注意が必要です。
不倫をした配偶者が、慰謝料請求を無視、支払わないでいると裁判を起こされるなどのリスクが高まるので注意が必要です。
支払について一括支払いが難しい場合の分割払い、過大な請求には減額交渉をおこないます。
交渉が難しい場合は、弁護士を間に立て、合意に向けた建設的な話し合いを進めることをおすすめします。
関係者が直接向き合い話をするよりもお互いに冷静になることができ、適切な着地点を見つけやすくなるでしょう。
3-2.不貞慰謝料または離婚慰謝料として請求
不貞行為による慰謝料は、不貞慰謝料や離婚慰謝料として相手に請求します。
離婚手続きの中で、不貞行為による精神的苦痛を離婚慰謝料として請求できます。
なお、離婚慰謝料は相手配偶者にして請求できません。
不倫相手に慰謝料を請求する場合、不貞慰謝料として損害賠償請求をおこないます。
不倫慰謝料と離婚慰謝料の違いについては次のとおりです。
「離婚慰謝料」と「不貞慰謝料」の違い | |
---|---|
不貞慰謝料 |
|
離婚慰謝料 |
|
慰謝料の請求期限、請求できる相手に違いがあります。
「不倫したことが許せない!」という場合に、いくら位の金額を、どのように請求をおこなうのが良いのか、弁護士に一度相談しておくと安心です。
実は弁護士は裁判手続きよりも、交渉事案を多く扱っています。
いわば交渉に詳しい法律の専門家です。
4.不倫で離婚する場合の注意点
不倫された側、不倫をした側の配偶者が、不倫を原因に離婚する場合に注意するべきポイントについて解説します。
4-1.不倫の証拠(手続の問題)
裁判では、裁判官にその事実が「確からしい」との確信や認識をもってもらうことが必要です。(心証(しんしょう)と言います)。
そのため、裁判では主張を裏付ける証拠が重要になります。
不貞行為を証明し、それにより婚姻関係の破綻を招き、精神的苦痛を負ったことについての証拠となるものです。
不倫をされた配偶者として慰謝料請求や離婚を考えている場合、不貞の証拠集めが重要になります。
不貞行為の証拠の代表例は下記のとおりです。
参照│不倫・浮気の具体的な証拠例
レストラン・ホテルの領収書、ラブホテルの会員権、飲食店・高級ブティックの領収書、車のGPS・ETCの利用履歴、電話・スマートフォンの通話履歴、性交渉・性交類似行為をうかがわせるSNS・手紙・メール内容や音声録音・写真・動画、産婦人科の診療報酬明細、探偵事務所・興信所の報告書、不倫・浮気の誓約書(自認書)、手帳・日記、子供のDNA鑑定・血液型の検査結果など
不倫相手との性交渉中のものと分かる動画といったものでなければ、複数の証拠があることが望ましいです。
ひとつだけでは証拠能力が不十分でも、他の証拠と組み合わせることで不貞行為を立証できる場合があります。
なお、興信所への依頼は一般的に高額な費用がかかります。
また、不貞慰謝料請求に足りる証拠を必ず確保できるとは限りません。
証拠集めとはいえ、慰謝料請求や離婚手続きを想定しておこなう必要があります。
慰謝料請求や離婚手続きに有効な不倫・浮気の証拠について、次の関連記事でくわしく解説しています。
参考記事
不貞を疑われている配偶者としては、不貞の事実が無いのであれば感情的にならず、不貞行為が誤解であることを説明する必要があります。
不貞の事実がある場合には、慰謝料の支払い、離婚手続をどのように進めていくかを考えておく必要があります。
4-2.夫婦をやり直したい(夫婦の問題)
夫婦関係調整調停(円満)利用による夫婦関係修復
話し合いにおいて、相手方配偶者から離婚請求を拒否することはできます。
不倫が原因で破綻した夫婦関係の修復をもとめて調停をおこなうこともできます。
家庭裁判所の「夫婦関係調整調停(円満)」と呼ばれる手続きを利用します。
調停委員を交えて関係修復に向けた話し合いをおこないますが、相手が強く離婚を望んでおり、別居、調停期日に出てこない場合には調停不成立で終了となる可能性が高いと言えます。
なお、円満調停中に相手から離婚調停を起こされた場合には、併合され1つの調停手続きとして進められます。
自分が離婚したくない場合でも、長期間の別居があれば、婚姻関係の破綻をうかがわせるものとして離婚事由になる可能性があります。
このように離婚を拒否し続けても、相手が離婚事由を獲得した場合には離婚に応じざるをえない状況となることがあります。
なお、婚姻関係を継続させる場合、不倫相手にのみ請求するのが一般的です。
離婚届不受理申出で勝手な離婚届出を防ぐ
市区町村役場に、離婚届不受理申出をおこなうことができます。
相手配偶者から勝手に離婚届出を提出されないようにします。
なお、離婚届不受理届が提出されている場合には、離婚合意に向けて話し合いを進めていく必要があります。
話し合いの中で離婚届不受理申出を取り下げてもらうか、話し合いで解決できない場合には調停離婚、裁判離婚により離婚を成立させる必要があります。
そのため解決には時間がかかります。
不倫誓約書で不倫関係の清算を約束する
不倫で離婚をせず夫婦を続けていく場合、不倫関係の清算をおこないます。
不倫相手、不倫をした配偶者の一方または双方と誓約書を取り交わすことがあります。
不倫誓約書(念書)では、不倫関係の清算(今後連絡や性交渉等を一切行わない)、慰謝料の支払い、違約時の賠償金支払いなどについて書いてもらいます。
不倫誓約書について、くわしくは次の関連記事で解説しています。
4-3.不倫した配偶者が親権者になれるか(子供の問題)
不倫した配偶者でも親権者になることができます。
一緒に過ごして子供の世話をする「身上監護権」、財産の管理行をおこなう「財産管理権」を合わせて親権と言いますが、夫婦がそれぞれにこの権利を分けて持つことも可能です。
親権者にふさわしいかどうかで親権者を決定します。
ただ、未成熟子つまり未成年の子に対して、ネグレクト、虐待や暴力などをおこなっていた場合には親権者として認められない可能性があります。
なお、不倫・浮気は褒められた行為ではありませんが、不貞行為は夫婦間の問題であって、親権を否定するまでの行為ではありません。
不倫をした配偶者が親権者となることについては、次の関連記事でくわしく解説しています。
4-4.不倫した配偶者からの養育費請求(子供の問題)
先ほど、親権は「身上監護権」「財産管理権」をその内容とすると説明しました。
身上監護権をもつ親(監護親)は、監護をおこなっていない相手配偶者(非監護親)に対して養育費を請求することができます。
養育費は、子供の教育、生活、医療などを含めた費用を指します。
離婚したからといって、養育費を支払わなくてよいわけではありません。
たとえ不倫をした配偶者が身上監護権を持ち養育している場合でも、養育費の請求を拒否することはできません。
養育費は配偶者にとっての権利ではなく、子供にとっての権利だからです。
不倫をした配偶者からの養育費の請求については、次の関連記事でくわしく解説しています。
不倫をした夫であっても、面会交流、養育費、親権を請求することはできます。
ただ、自分が不倫をした負い目から相手方配偶者に大幅に譲歩して、後悔されているケースも少なくありません。
離婚後の親権変更や、面会交流の条件変更も手段としてはありますが、実際には困難をともなうこともありますので、離婚時にしっかりと話し合いをしておくことが大切です。
なお、離婚時に面会交流の約束をしなかった場合でも、子供が面会交流を望むのであれば実施できる可能性があります。
面会交流もまた、子供にとっての権利です。
「子供に会えず、つらい」思いをされている場合には、一度当事務所までご相談ください。
4-5.不倫した配偶者からの財産分与(お金の問題)
財産分与は、婚姻期間中に築いた夫婦の共有財産の分与です。
不倫したことと、財産分与は法律上別問題です。
そのため、不倫を理由に財産分与を拒否することはできません。
(ただ、離婚時に離婚慰謝料を含めて、財産分与の割合や内容を事実上調整することも考えられます。)
途中、離婚に向けて別居をした場合、別居開始時点までの財産が分与対象となります。
一般的に、夫婦の財産分与は2分の1の割合で分配します。
また財産分与の対象は名義によらず、実質的に夫婦共有の財産かどうかで判断します。
たとえば、口座名義を夫婦共同名義で開設はできません。
生活費用や子供の教育費として積み立てていた相手方が管理する預貯金口座は夫婦共有と言えますので、財産分与の対象となります。
4-6.別居中の不倫(お金の問題)
別居中に配偶者が不倫をした場合、慰謝料請求が可能かどうかはパターンによります。
-
請求できる場合
・不貞行為後の別居
・別居後の不貞行為で婚姻関係が破綻した場合
-
請求が難しい場合
・離婚前提で別居を開始した場合
・別居後に離婚調停中、離婚裁判中
・長期間にわたる別居
別居後の不倫・浮気により慰謝料請求できるかどうかについては、個別で具体的に検討していくことが必要です。
次の関連記事でもくわしく解説しています。
4-7.別居中の生活費(お金の問題)
別居期間中の生活費を相手方配偶者に請求することは可能です。
婚姻費用の支払いについて話し合いで解決できない場合、家庭裁判所に対して婚姻費用を定める調停や審判をおこないます。
ただ、不倫をした配偶者が調停や審判で婚姻費用を請求したとしても認められない可能性があります。
ただ、先ほど解説した子供の養育費は、子供にとっての権利であり不貞行為とは別問題ですから、子供の生活費分について認められるケースが多いです。
なお、別居を決意した場合、同居している状況だからこそできる離婚準備を済ませておきましょう。
相手方配偶者の財産調査です。
離婚後にする慰謝料請求、財産分与請求、養育費請求の場面おいてベースとなる、収入や資産の調査は同居しているからこそ、確認することができます。
相手方からDV・ハラスメント、子供への虐待などを受けていて生命の危険が迫っている時には、安全を確保することが最優先に行動して頂きたいですが、そうしたリスクがない場合には離婚後の生活を見すえ、経済面での安心を確保するために夫婦間の財産状況を確認しておくと良いでしょう。
4-8.ダブル不倫の離婚(離婚とお金の問題)
夫婦がお互いに不倫をしている場合を「ダブル不倫」と呼ばれています。
この場合、お互いに貞操義務違反、配偶者に対する精神的苦痛を与えた加害者となります。
協議離婚、調停離婚で離婚が成立しない場合、裁判離婚を提起することになります。
しかし、お互いに有責配偶者となるため、相手の不貞行為を原因にした離婚裁判は棄却される可能性があります。
この場合には、法定離婚事由(民法770条)のひとつ「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があることを主張して、離婚を求めることになります。
ダブル不倫の場合、不貞行為を原因とする慰謝料額は対等になるケースが多く、相互に慰謝料請求をすることに意味がないことがあります。
なお、離婚慰謝料の中には、不貞行為による慰謝料以外に、DV・悪意の遺棄なども請求内容に含まれます。
不貞行為以外で慰謝料増額の要因があれば、請求に意味があります。
このように個別の事情に応じて慰謝料の金額や内容が変わるため、弁護士にアドバイスを受けるのも良いでしょう。
なお、不倫相手が既婚者である場合もダブル不倫と言います。
ダブル不倫についての問題点について、次の関連記事で紹介しています。
4-9.不倫相手との再婚(離婚後の生活)
不倫をした夫(男性)は、離婚後すぐに不倫相手と再婚することができます。
なお、令和5年1月から女性の再婚禁止期間は廃止されました。
以前は再婚期間禁止期間(離婚から100日経過後にしか再婚できない)がありました。
この法制度の趣旨は、女性が出生した子供が前夫か現在の夫の子か分からなくなるのを防ぐためです。
しかし、この再婚禁止期間を定めた法律(旧民法733条)は廃止され、子を妊娠してから出産までの間に複数の婚姻(結婚)があった場合には、最後の夫の子どもと推定する、という法律へと変更になりました。
なお、最後の夫が「嫡出否認の訴え」と呼ばれる手続きをおこない勝訴することで、その前の夫の子どもであると推定されることになります。
5.まとめ
不倫をされた側、不倫をした側の双方にとって、慰謝料や離婚手続きの問題解決は悩ましいものです。
こうした問題解決のために弁護士に依頼するのも選択肢のひとつです。
話し合いの代行や、相手方からの過大な離婚条件や慰謝料請求に対して適切な反論により適切な解決を期待でき、日々の安心を取り戻しやすくなります。
古山綜合法律事務所では、不倫・男女トラブルだけでなく、もちろん離婚問題のサポートやアドバイスをおこなっています。
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