協議離婚とは?進め方や注意点、トラブル時の対応
離婚
目次
-
- 1.協議離婚とは
- 1-1.離婚における協議離婚の割合
- 1-1-1.協議離婚以外の離婚方法
- 1-2.各離婚方法のメリット・デメリット比較
- 2.協議離婚で考えるべき離婚条件
- 2-1.お金のこと
- 2-1-1.財産分与
- 2-1-2.慰謝料
- 2-1-3.年金分割
- 2-1-4.婚姻費用の精算
- 2-2.子どものこと
- 2-2-1.親権
- 2-2-2.面会交流
- 2-2-3.養育費
- 3.離婚協議の進め方
- 3-1.離婚の切り出し方
- 3-2.別居
- 3-2-1.婚姻費用の請求
- 3-2-2.養育費の請求
- 3-2-3.面会交流の請求
- 3-3.話し合い(協議)
- 3-4.離婚協議書作成
- 3-4-1.公正証書による作成
- 3-5.離婚届の提出・離婚後の手続き
- 4.協議離婚のトラブル事例と対応方法
- 4-1.DV・モラハラで話し合いが難しい場合
- 4-2.離婚条件に合意できない場合
- 4-3.取り決めた離婚条件が守られない場合
- 4-4.当事者同士で話し合いが難しい場合
- 4-4-1.離婚弁護士に依頼するメリット
- 5.まとめ
1.離婚協議とは
協議離婚とは、夫婦間の話し合いで離婚に合意し、市区町村役所への離婚届を提出することにより成立します(民法765条、戸籍法76条)。
夫婦双方が合意すれば、離婚条件の内容や離婚時期などについて、基本的に自由に決めることができます。
そのため、離婚にかかる費用や手続きの負担は軽く、離婚成立までにかかる期間も短くて済む可能性が高い離婚手続きです。
1-1.離婚における協議離婚の割合
「協議離婚」と「裁判離婚(調停・審判・和解・判決)」の割合をみると、85%以上の夫婦の離婚は「協議離婚」です(令和4年度「離婚に関する統計」の概況 人口動態統計特殊報告「図 12-1 都道府県、離婚の種類別にみた離婚全体に占める割合 -令和2年-」)。
協議離婚を選択した理由は多い順に「離婚することに争いがなかったから(61.7%)」「(離婚に)争いはあったが、相手が離婚届に署名・押印をしたから(19%)」「家庭裁判所に行くことに抵抗があったから(7.8%)」となっています(法務省 協議離婚に関する実態調査結果の概要)。
1-1-1.協議離婚以外の離婚方法
協議離婚以外に、家庭裁判所の手続きによる次の離婚方法があります。
家庭裁判所の離婚手続きと内容 | |
---|---|
① 離婚調停 |
男女1名以上の調停委員、裁判官で構成される調停委員会が夫婦の間に入って、離婚成立に向けて離婚条件の調整などの話し合いをサポートします。 基本的に、夫婦がそれぞれ別の待合室で待機し、調停室に交互に呼び出されるためお互いに顔を会わせることはありません。 |
② 離婚審判 |
離婚調停が不成立で終了した場合に、離婚をした方が良いと裁判官が判断した場合に自動的に審判に移行することがあります。不服がある場合には異議申し立てが可能で、これにより審判は無効になります。 |
③ 離婚裁判 |
法律上、いきなり裁判を起こすことはできません。 参照リンク |
1-2.各離婚方法のメリット・デメリット比較
各離婚手続きのメリット、デメリットや違いは次の通りです。
離婚手続き | メリット | デメリット |
---|---|---|
協議離婚 [話し合い] |
・柔軟な離婚条件で合意が可能 ・早期の離婚合意が可能 ・他手続に比べて時間、費用面で負担が少ない ・法定離婚事由(民法770条)がなくても離婚可能 |
・相手が交渉に応じるかは任意 ・感情の対立が激化、悪化の可能性 ・DV、虐待の加害者側配偶者との交渉リスク |
調停離婚 [家庭裁判所] |
・調停委員によるサポート ・相手と顔を合わせずに済む ・調停成立時に合意した離婚条件を記載した調停調書が作成される(後日の紛争防止に期待) |
・手続の負担が大きい ・解決に時間がかかる(半年~※) ・担当する調停委員により進行が左右される可能性 ・相手が出頭しない、話し合いに応じない場合、手続きが終了する |
裁判離婚(離婚訴訟) [家庭裁判所] |
・相手が応じなくても結論がでる | ・手続の負担が大きい ・解決に時間がかかる(1年~※) ・希望に沿った解決ができない可能性 ※ 離婚調停、離婚裁判にかかる期間は目安です。 裁判所の統計によると調停離婚の審理期間で一番多いのは6か月以内、次に1年以内となっています(令和元年)。 また、離婚裁判では判決までにかかった平均審理期間は19.1か月というデータがあります。 このように裁判離婚において通常は長い時間がかかります。 |
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1 配偶者に不貞な行為があったとき。
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
離婚協議や離婚調停では、法定離婚事由がなくても当事者で合意ができれば離婚は成立します。
法定離婚事由については、次の離婚裁判のコラムで詳しく解説しています。
参照記事
2.協議離婚で考えるべき離婚条件
早く離婚したいばかりに、焦って離婚届を提出してしまうと後になって再び相手とトラブルになったり、新生活をスタートしてから後悔するケースが見られます。
そのため、次の点について取り決めをしておくべきかどうかについて一度落ち着いて考えてみましょう。
離婚条件で考えておくこと、決めておくと良いことは、大きく分けて「お金」「子ども」の2つです。
2-1.お金のこと
お金の問題は、離婚後の新生活、子どもとの生活、老後の生活に大きく影響します。
お金を受けとる権利者側である配偶者にとって、具体的に取り決めをしておくことで、未払い・不払いがあった時に支払いを求めるための具体的な行動を取ることができます。
金銭面で考えておくべきポイントは、次の4つです。
2-1-1.財産分与
財産分与とは、婚姻期間に夫婦で築いた共有財産を公平に分けて清算することです。
分割割合は原則、2分の1ずつです。
専業主婦(主夫)で無収入であっても、家事などにより家庭を支えているからこそ、他方の配偶者は安心して仕事をして収入を得ることができたと考えられます。
また夫婦間で収入の多い少ないがあったとしても、原則どおり半分ずつ分配することが一般的です。
財産分与の主な対象は次のような資産です。
なお、結婚後にした自宅の住宅ローン、子どもの学費の借入はマイナスの財産と言えますが、負債・ローンは財産分与の対象とはならず、借入名義である配偶者が離婚後も返済を継続します。
- 現金、預貯金
- 有価証券(株式・国債)、投資信託
- 不動産(住宅ローンある場合、アンダーローン*)
*アンダーローンとは、支払い残額よりも資産価値があることです。
例えば、ローンが100万円残っているものの、自宅マンションの市場価値が5000万円のような場合、4000万円以上の価値が見込めるためアンダーローンと言えます。 - 自動車(自動車ローンある場合、アンダーローン)
- 絵画、骨とう品、宝石、家具など高価な動産類
- 家財道具
- リゾート会員権、ゴルフ会員権
- 保険(生命保険、自動車保険、学資保険など)
- 退職金
- 年金
離婚時の財産分与については、次の関連コラムで弁護士が詳しく解説しています。
参照コラム
- 離婚時の財産分与の進め方とトラブル予防のための注意点
離婚時の財産分与の対象財産、対象外となる負債・ローンの取り扱い、相手が共有財産を明らかにしてくれない場合の調査方法、分け方などについて詳しく解説しています。
2-1-2.慰謝料
離婚時に、相手配偶者に対して慰謝料を請求できる場合があります。
慰謝料請求できる条件は、簡単に説明すると離婚原因が相手にある場合です。
離婚すること自体や、離婚原因による精神的苦痛に対する慰謝料です。
例えば、配偶者以外との性交または性交類似行為である不貞行為により離婚する場合、裁判上での慰謝料の相場は100万円~300万円程度です。
この金額は、不貞関係にある当事者の資力や社会的地位などの事情により変動することがあります。
なお、不貞行為の場合、慰謝料請求の相手方は不貞関係にある当事者です。
離婚手続きとは別に、不倫・浮気相手に請求することも可能です。
ただし、この慰謝料請求は不倫当事者が連帯して責任を負うもので、慰謝料相当の賠償金を既に当事者の一方から支払いを受けている場合には、他方当事者に対して更に請求することはできません(慰謝料の二重取りはできない)。
不貞行為に対する慰謝料請求については、次の参照コラムで詳しく解説しています。
参照リンク
- 離婚や不倫で慰謝料請求できる条件とは?ケース別に弁護士が解説
離婚時に慰謝料請求できる条件について詳しく解説しています。
不貞行為に対する慰謝料は、離婚手続きにおいては離婚慰謝料、不貞慰謝料請求として個別に請求する場合には、不貞慰謝料ついて請求することが一般的です。
慰謝料含め、金銭面で適切な内容で取り決めをすることに不安がある場合、一度弁護士に相談をして、あなた自身のご事情に応じた適切な離婚条件を確認しておくのも良いかもしれません。
2-1-3.年金分割
年金分割とは、婚姻期間中に納めた厚生年金の支給額の計算の基となる報酬額(標準報酬)の記録を分割することです。
年金記録を分けることで、年金支給時に加算された金額の支給を受けることができます。
ただ、年金分割で大幅に受給額が増えるわけではなく、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」で公開されている最新の「令和4年度」(令和6年4月10日現在)を確認すると、年金分割を受けることで増額した平均年金月額(変動差)は約3万2千円です。
3号分割のみの場合の平均年金月額(変動差)は約7千円となっています。
そのため、年金分割により「老後の生活は安心」と言うわけではありません。
離婚時に自動的に年金分割されるわけではなく、日本年金機構や年金事務所での手続きが別途必要になります。
手続きの流れや必要書類などについては次のコラムで詳しく解説しています。
参照コラム
- 離婚と年金分割の完全ガイド
年金分割の対象は厚生年金保険、共済年金です。年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類の方法があります。選択する際は双方の年収や勤務形態、未来の見通しなど多様な要素を考慮する必要があります。
2-1-4.婚姻費用の精算
婚姻費用とは、配偶者・未成熟の子どもが生活を維持するために必要な費用のことです。
食費、水道光熱費、医療費などの生活費や養育費を含むと考えられています。
法律上、夫婦はお互いに扶養義務があります(民法760条)。
離婚前に別居をする場合でも、特別の事情がない限り、この扶養義務を負います。
そのため別居期間中であっても相手方配偶者に対して婚姻費用の請求が可能です。
なお、婚姻費用の相場は、夫婦相互の年収、子どもの人数や年齢に応じて算定できる家庭裁判所「養育費・婚姻費用算定表」にもとづいて計算した金額を指すことが多く、算定表にもとづいて計算した金額から個別の事情を踏まえて具体的な金額を調整することが一般的です。
「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
ページタイトルは平成30年度となっていますが、最新の令和元年版です。
なお、子の人数、年齢別での具体的な養育費の算定表は次のように分かれています。
(表10)婚姻費用・夫婦のみの表
(表11)婚姻費用・子1人表(子0~14歳)
(表12)婚姻費用・子1人表(子15歳以上)
(表13)婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
(表14)婚姻費用・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)
(表15)婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)
(表16)婚姻費用・子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)
(表17)婚姻費用・子3人表(第1子15歳以上,第2子及び第3子0~14歳)
(表18)婚姻費用・子3人表(第1子及び第2子15歳以上,第3子0~14歳)
(表19)婚姻費用・子3人表(第1子,第2子及び第3子15歳以上)
離婚の話し合いの中で、別居期間中における婚姻費用の未払いがある場合には、その精算を求めることもできます。
2-2.子どものこと
ここでいう子どもとは18歳未満の未成年の子どもを言います。
未成年と似た言葉に「未成熟子(みせいじゅくし)」があります。
未成熟子とは経済的、社会的に自立していない親の扶養が必要な子どものことを言います。
この定義は、先ほどの養育費や婚姻費用(別居中の子どもの養育費)を考える上で用いられます。
2-2-1.親権
未成年の子がいる離婚の場合、親権者を決めて離婚届に記載し提出する必要があります。
親権は、法律行為の同意権である「財産管理権」、子どもと生活し養育する「身上監護権」から成り立っています。
財産管理権と身上監護権は一人の親が持つことが一般的です。
親権者の決め方、親権獲得のためのポイント、離婚後の親権者の変更方法、親権に関するトラブルについて、次のコラムで詳しく解説しています。
参照リンク
2-2-2.面会交流
面会交流とは、子どもと生活し養育監護をしていない親と子どもとの交流です。
離れて暮らす子どもと面会する権利である面会交流権は親だけでなく子どもの権利でもあります。
子どもの心身の成長にとって重要な機会であり、福祉に反しない限り実施されるべきものと法律上考えられています。
面会交流の方法は、直接面会するだけではなく、手紙やビデオ通話など面会以外による方法も含みます。
- 面会交流の実施方法(直接面会/ビデオ通話/手紙・写真/電子メールなど)
- 直接面会による場合
・ 面会場所
・ 第三者支援機関の利用 - 面会交流の頻度(例 月1回の直接面会等)
- 面会交流にかかる費用負担
面会交流の決め方、面会交流を決める際のポイント、面会交流の拒否に関する問題などについて、次のコラムで詳しく解説しています。
参照リンク
2-2-3.養育費
養育費とは、未成熟子である子どもが経済的、社会的に自立するまでの生活費などの費用です。
離婚後も、離れて暮らす親の扶養義務は原則として継続します。
そのため、子どもと同居し生活している監護親に対して養育費を支払う義務があります。
ただ、養育費は請求した時点から支払い義務が発生することに注意が必要です。
離婚後に支払いを受けるために請求を忘れないようにしましょう。
毎月の養育費の相場は、婚姻費用と同じく家庭裁判所の養育費・婚姻費用算定表にもとづいて算定した金額をもとに、個別の事情に応じて具体的な金額を決めます。
支払い方法や期間、私学進学や病気による入院など特別な費用が必要になった時の支払いをどうするかなどについて話し合うと良いでしょう。
毎月の養育費の算定方法、決めておくべき条件、養育費の支払期間と支払方法、注意点については、次のコラムで詳しく解説しています。
参照リンク
3.離婚協議の進め方
離婚協議は話し合いを基本としているため、特に決まった進め方があるわけではありません。
次に、一般的な離婚協議の進め方や手順について解説します。
3-1.離婚の切り出し方
離婚をどのタイミングで、どう想いを切り出すのか悩まれると思います。
別居後にメールやLINEなどのSNSメッセージや内容証明郵便により、離婚を切り出すこともあります。
DV・モラハラが離婚理由である場合や、感情面の激しい対立や離婚条件に争いがある場合では冷静な話合いが難しいと言えます。
こうした状況では弁護士に代理交渉を依頼するか、家庭裁判所の離婚調停による解決を検討されるケースが多いです。
なお、離婚する前に、子どもに「離婚すること」などについて伝えたかについて次のようなデータがあります。
参照│協議離婚に関する実態調査結果の概要(令和2年度法務省委託調査研究)
「あなたは離婚する前に、子どもに対して次の事項について話をしましたか」
話をした | 話をしていない | |
---|---|---|
離婚すること | 53% | 47% |
離婚理由 | 33.2% | 66.8% |
離婚後の親権者 | 41.8% | 58.2% |
離れて暮らす親との面会交流 | 42.7% | 57.3% |
養育費 | 18.7% | 81.3% |
住居・学校など | 18.7% | 81.3% |
苗字変更 | 32.5% | 67.5% |
子どもに対しても何を伝えるべきか難しい問題ですが、年齢や性格をふまえて、不安な気持ちを少なくできるように考えていきましょう。
3-2.別居
協議離婚をした夫婦において、離婚前に別居をする方は約4割です。
参照│協議離婚に関する実態調査結果の概要(令和2年度法務省委託調査研究)
あなたと離婚した相手は、協議離婚した年の離婚よりも前に、お互いの不仲などを原因とする別居をしましたか。(リンク)
別居をした 43% (別居をしていない 57%)
離婚裁判では、離婚事由を作った有責配偶者からの離婚が認められることはハードルが高いです。
法定離婚事由のひとつに当たる不貞行為をした配偶者が、自身の不貞行為を原因に離婚を求めても、裁判所は離婚を認めません。
しかし、3年を超えるような別居をしている場合、長期間の別居の事実は「婚姻を継続しがたい夫婦関係の破綻」に当たるとして、裁判所に離婚が認められる可能性があります。
3-2-1.婚姻費用の請求
別居期間中も、夫婦における扶養義務は継続するため、収入が高い配偶者に対して婚姻費用を請求することは可能です。
話し合いで相手が支払いに応じない場合、家庭裁判所の調停手続を利用し支払いを求めることもできます。
そのため専業主婦(主夫)やパートの方のように収入面での不安がある方も、婚姻費用の支払いを受けることで別居中の生活費を確保することで、離婚手続きを安心して準備し進めることができます。
3-2-2.養育費の請求
別居期間中の子どもの養育費の請求は可能です。
話し合いで相手が支払いに応じない場合には、婚姻費用同様に家庭裁判所の調停手続を利用することもできます。
参照コラム
3-2-3.面会交流の請求
子どもと離れて暮らすことになった親は、別居している子供との面会交流を求めることが可能です。
話し合いによる面会交流の実施が難しい場合には、家庭裁判所の調停手続きを利用することができます。
3-3.話し合い(協議)
当事者間の話し合いで考えておくと良いのは、先ほどの離婚条件です。
法律に反しない限り、離婚条件の内容は自由に決めることが可能です。
子供のこと(親権者、面会交流、養育費)
各項目で、自分自身がどのようなことを希望するのか書き出してリストアップして、頭の中と気持ちを整理しておくと良いでしょう。
話し合いをスムーズに進めるためには離婚条件で譲歩が必要になることがあります。
そのため、リストアップした離婚条件の優先順位をつけて気持ちの準備をしておくと、安心して相手との交渉にのぞむことができるでしょう。
3-4.離婚協議書作成
離婚協議による離婚条件の取り決めは、口約束だけで決めてもかまいません。
しかし、口約束だけでは後になって「約束した/約束していない」とトラブルになることがあります。
そのため、合意内容を離婚協議書という形で書面にして残しておくことが望ましいです。
離婚条件において利益を受ける側にとって、書面化しておくことで後日のトラブル時に裁判手続きの約束の証拠となり、権利を主張しやすくなるメリットがあります。
参照│協議離婚に関する実態調査結果の概要(令和2年度法務省委託調査研究)
「あなたは、離婚した相手との間で次の事項について取決めをしましたか。」
書面(公正証書を除く)で決めた | 公正証書で取り決めた | |
---|---|---|
養育費 | 20.6% | 23.4% |
面会交流 | 17.0% | 19.4% |
財産分与 | 15.7% | 15.8% |
3-4-1.公正証書による作成
夫婦間で離婚条件について合意できている場合には、公証役場で公正証書の形で合意書を作成することもできます。
公証役場の公証人は元裁判官、元検察官などの経歴をもつ法律の専門家です。
専門家が作成するため法律的に有効な書面を作成できます。
信頼性が高く法的効力のある公文書として作成されるだけでなく、公証役場で原本が保管されるため偽造変造や紛失の心配がありません。
また、公正証書の特徴として、養育費などの金銭の支払いの取り決めをした場合に、金銭を支払う側が約束を守らず不払いとなった際に、給料や預金口座の差押えなどの強制執行を受けることについてあらかじめ承諾する旨の約束をしておくことができます(強制執行認諾文言付き公正証書)。
この約束を公正証書で条項(強制執行認諾条項)にしておくことで、不払いがあった際に裁判をすることなく、すぐに強制執行をおこなうことができます。
すみやかな強制執行は、相手の財産を差し押さえ、回収できる可能性を高めます。
関連記事
- 離婚協議書を公正証書で作成する方法、流れと費用を解説
当事務所では離婚協議書を公正証書による方法で作成することをおすすめしています。
離婚協議書の作成のみでも対応可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
なお、公証人は夫婦間の意見調整などをおこないません。
そのため、離婚の合意、離婚条件について取り決めをしておく必要があります。
また通常は、金銭の支払いを要する条件を定める場合には強制執行認諾条項付きの公正証書で作成します。
強制執行認諾条項とは、取り決めた金銭の支払いをしない場合に、支払い義務者において給料の差押えなど強制執行されることを受け入れる、という約束です。
そのため、金銭支払いの義務を負う側にとっては、負担となることから離婚公正証書による作成を要求したとしても拒否される可能性もあります。
3-5.離婚届の提出・離婚後の手続き
離婚協議が成立したのち、市区町村役所へ離婚届を提出します。
本籍地以外の市区町村役所へ提出する場合、婚姻中の戸籍謄本(全部事項証明書)1通を添えて提出します。
必要書類である戸籍謄本は窓口だけでなく郵送でも取得することができます。
交付手数料は1通450円です。
なお、市区町村役所によっては、本人確認書類の提示が必要になる場合もあるため運転免許証やパスポートなどを持参するようにしましょう。
また、協議離婚の場合、離婚届の証人欄には18歳以上の成人2名の証人による自書による署名捺印が必要です。
証人になると法的責任が発生しないか心配になるかもしれませんが、基本的に何か責任やリスクを負うことはありません。
未成年の子どもが居る場合には、父母のいずれかを親権者として指定し記入しなければなりません。
離婚届の記載事項や内容は多岐に渡るため、不明点があれば書き方を役所で確認しておくと良いでしょう。
なお、相手が勝手に離婚届を提出する恐れがある場合、申出人であるあなたの本籍地または住民票のある市区町村役所に「離婚届不受理申出」をすることができます。
万が一、離婚届が受理されてしまった場合、家庭裁判所の「協議離婚無効確認調停」または「離婚無効確認の訴え」によらなければ、協議離婚の記載がされた戸籍を訂正することはできません。
また離婚後には別途各種手続きが必要になります。
参照 │ 離婚後の手続き一覧表
<戸籍・住所等>
【家庭裁判所】
- 子の氏の変更許可申立
(親子で姓を同じにしたい場合。変更許可を得たのち市区町村役所へ入籍届出)
【市区町村役所】
- 住民票異動届
(転居/転出届・転入届) - 世帯主変更届
- 印鑑登録
(新しい印鑑)
<年金・社会保険>
- 国民年金の種別変更、健康保険の手続
(社会保険・国民健康保険の切替えなど)
<年金分割>
【年金事務所】
- 年金分割の手続
(年金手帳など必要書類を確認し事前準備)
<そのほか手続>
- 銀行・証券会社・クレジットカード等の住所・本人情報の変更
- 未成年の子の転入手続
(転校前後の学校・市区町村役所で手続)
年金分割のように、離婚後に一定期間内の手続きが必要になるものがあります。
各種手続きについて離婚後すみやかに手続きをおこなうようにしましょう。
4.協議離婚のトラブル事例と対応方法
協議離婚は早期解決が期待できる離婚方法ですが、自由度が高いためトラブルも多いです。
どのようなトラブルの可能性があるか解説します。
4-1.DV・モラハラで話し合いが難しい場合
身体や精神的な危害がおよぶDV(家庭内暴力)、モラルハラスメントの被害者であるケースでは直接話し合いをすることは勿論、間接的に連絡を取ることは危険をともないます。
そのため、弁護士に代理交渉を依頼される方が多くいらっしゃいます。
意外に思われるかもしれませんが、弁護士は裁判よりも任意交渉の事案が多くあります。
交渉に慣れた弁護士が代理人となることで、精神的・手続き面でのリスクを引き受けることができます。
ひとりで解決が難しい場合、弁護士に離婚相談を受けておき、解決のための選択肢やサポートを確認しておくことも対処法のひとつと言えます。
4-2.離婚条件に合意できない場合
離婚条件の合意ができない状況は、お互いに譲れない事態に至っていることも多く、お互いの希望を100%通すことは難しいでしょう。
気持ちに折り合いをつけたり、優先度が低い離婚条件については譲ったりすることで、あなたが強く希望する条件を獲得できることがあります。
例えば、親権は譲るものの、子供の成長や気持ちに配慮しながら面会交流を可能な限り実施する約束を取りつけたりすることがあります。
ただ、どうしても親権者となりたい場合には、家庭裁判所の調停手続きなどを利用し、親権の獲得を目指すことになります。
当事者で決着がつかない場合には、離婚調停など他の方法による解決を目指すことになります。
4-3.取り決めた離婚条件が守られない場合
離婚協議で口約束だけではなく、離婚条件を書面化した場合でもその約束が守られない場合があります。
慰謝料や養育費などの金銭面での不払いや、離婚後の面会交流の不実施です。
解決策として、家庭裁判所の手続きや強制執行を通して権利を実現することになります。
当事務所でも次のような離婚成立後のトラブルについて法律相談、サポートが可能です。
あなたに代わって相手方配偶者と交渉や手続きをしっかりと進めていきます。
ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。
- 養育費の不払い
- 財産分与・慰謝料の不払い
- 面会交流に応じない
4-4.当事者同士で話し合いが難しい場合
当事者同士の話し合いは冷静になれず感情的になりやすいことがあります。
離婚条件について話し合いが不十分なまま離婚すると、不利な条件での離婚やその後悔だけではなく、トラブルが再発する可能性もあります。
交渉が難航する場合には、弁護士を間に入れて協議離婚をおこなうことや、家庭裁判所の離婚調停を利用することが対処法として考えられます。
4-4-1.離婚弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼されるメリットは次の3つです。
- 精神的ストレスの軽減
弁護士が直接相手と交渉。解決まで伴走、いつでも相談できる安心感。 - 手続負担の軽減
相手方への内容証明郵便や離婚協議書・離婚公正証書作成のサポート。 - 適正な解決結果が期待できる
離婚実務を理解、事例に応じた適切な金額・条件を熟知。
着手金、報酬金といった弁護士費用がかかるというデメリットはありますが、直接話し合いをしなくてよくなるだけでも心は軽くなるはずです。
また、離婚問題に注力する弁護士であれば、相手より有利な離婚条件獲得のための専門家ならではのサポートを受けることができます。
5.まとめ
離婚の多くは、当事者間で話し合いによる協議離婚です。
ただ、自分たちだけで話合いを進めることができない、離婚条件に納得がいかず揉めるケースがあります。
古山綜合法律事務所では、離婚問題・男女問題について注力しており、専門サポートによる豊富な解決実績があります。
協議離婚、調停離婚、離婚裁判のいずれの段階からもサポートは可能ですが、状況が複雑化する前に早めにご相談、ご依頼されることをお勧めしています。
現在、当事務所では無料相談(初回)を実施しています。
あなたのお気持ちや希望をお伺いし、現在抱えておられる悩みや不安への対処法をアドバイスします。また、具体的な慰謝料・養育費・婚姻費用がいくらになるのかなどの質問や疑問に丁寧に回答します。
なお、弁護士及びスタッフには守秘義務があるため、お問合せ自体はもとより相談内容が外部に漏れることは絶対にありません。
メール・LINE(24時間受付)や、電話で相談予約を受付しております。
ぜひお気軽に当事務所までお問い合わせください。
参照リンク
- 解決事例 │ 離婚問題
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