離婚協議書はぜったい公正証書でつくるべき?
離婚
離婚協議書を作るときはどんな内容でも公正証書のほうがよい?
「離婚協議書を作ることになったのですが、公正証書にするほうがよいですか?」
当事務所にご相談に来られる方から、このような質問を受けることがあります。
では、離婚協議書はどんな内容のものでも公正証書のほうがよいのでしょうか。
それは、公正証書でつくる場合のメリットを知れば分かります。
そもそも公正証書ってなに?
公正証書とは、個人や会社などから委嘱によって、公証人が権限に基づいて作成する文書をいいます。
公正証書には、契約に関する公正証書(売買契約に関する公正証書など)、単独行為に関する公正証書(遺言公正証書など)、事実実験公正証書(尊厳死の意思表示に関する公正証書など)の種類があります。
離婚協議書は、基本的に「契約に関する公正証書」にあたります(離婚給付等契約公正証書)。
公正証書は、一部を除き、代理人でも手続きできます(本人の委任状が必要です。)。
そのため、離婚協議書を公正証書でつくる場合、夫婦揃って公証役場を訪問するのが原則ですが、弁護士が一方の代理人として手続きすることで、当事者同士が顔を合わせずにすむことができます。
離婚協議書を公正証書でつくることのメリットとは
離婚協議書を公正証書でつくることのメリットは、大きく分けて以下の3つがあります。
- 養育費などの不払いがあったときにすぐに強制執行できる(強制執行認諾文言のある場合)。
- 信用性が高く、あとから取消しや無効とされるおそれが低い。
- 紛失のおそれがない。
① 養育費などの不払いがあったときにすぐに強制執行できる(強制執行認諾文言のある場合)
もし、養育費などを支払う約束をして、自分たちで離婚協議書を作ったものの、あとになって相手が一方的に支払いをやめてしまったとき、相手の預金などの財産を差し押さえる(強制執行)ためには、まず裁判を提起して判決をもらうなどの手続きをしなければなりません。
つまり、不払いがあってもすぐに強制執行することはできません。
これに対し、離婚協議書を公正証書でつくり、その中に一定額の金銭の支払いについての合意と債務者が強制執行を受諾した旨(強制執行認諾文言)を記載すると、相手が不払いを起こしたとき、裁判などをせず、すぐに相手の財産の差押えができるようになります。
なお、金銭以外の財産給付の合意については、公正証書によって強制執行することができません。
② 信用性が高く、あとから不存在や取消し、無効とされるおそれが低い。
離婚協議書を自分たちで作ると、ほとんどの場合は自分たちだけが同書を所持することになるため、紛失してしまうおそれがあります。
離婚協議書は合意内容を記載した非常に重要な証拠ですので、これを紛失してしまうとトラブルが起きたときに適切に対処できなくなってしまうおそれがあります。
これに対し、公正証書を作ると、当事者に正本や謄本が交付されるほか、もしこれらをなくしても申請すれば謄本をもらうことができますので、紛失防止につながります。
③ 紛失のおそれがない。
離婚協議書を自分たちで作ると、ほとんどの場合は自分たちだけが同書を所持することになるため、紛失してしまうおそれがあります。
離婚協議書は合意内容を記載した非常に重要な証拠ですので、これを紛失してしまうとトラブルが起きたときに適切に対処できなくなってしまうおそれがあります。
これに対し、公正証書を作ると、当事者に正本や謄本が交付されるほか、もしこれらをなくしても申請すれば謄本をもらうことができますので、紛失防止につながります。
公正証書のメリットと手間や時間、費用とを天秤にかけて判断する
ご説明したとおり、離婚協議書を公正証書でつくると大きなメリットがありますが、その中でも、養育費などの支払いを受ける側は、不払いのときすぐに強制執行できる(相手はそのプレッシャーから支払いをやめにくい)という点で非常に大きいといえます。
これに対し、合意後における金銭の支払いが予定されていないときや、養育費を支払う側にあるときは、「不払いのときにすぐ強制執行できる」というメリットを受けません。
とすると、これらの場合であとから合意の存在や内容を争われるおそれがないと思われるときは、信用性の高い離婚協議書が必要ない(さらに離婚協議書を紛失しても困らない)ため、わざわざ手間や費用をかけてまで公正証書にする理由がないことになります。
また、自分たちで離婚協議書を作る場合と比べて公正証書にするほうが時間はかかりますので、一刻も早く離婚したいときは公正証書がよいと限りません。
したがって、多くの場合は離婚協議書を公正証書でつくるほうがよいでしょうが、どんな内容であってもあてはまるわけではなく、公正証書のメリットと、手間や時間、費用とを天秤にかけて、公正証書をつくる必要がないという結論もありえることに注意しましょう。