不貞慰謝料請求に有利な不倫・浮気の証拠


不貞慰謝料

執筆者 弁護士 古山 隼也 (こやま しゅんや)


  • 大阪弁護士会所属 登録番号 第47601号

略歴

清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁(平成18年まで勤務)/京都大学法科大学院卒業/古山綜合法律事務所 代表弁護士

講演・メディア出演・著書

朝日放送「キャスト」/弁護士の顔が見える中小企業法律相談ガイド(弁護士協同組合・共著)/滝川中学校 講演「インターネットトラブルにあわないために-トラブル事例を通じて-」


大阪市職員、大阪・京都の法律事務所の勤務経験を活かし、法律サービスの提供を受ける側に立った分かりやすい言葉で説明、丁寧なサポートで、年間100件以上の問題解決をおこなっています。

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不倫・浮気の証拠があれば不貞慰謝料請求や、不貞行為を原因とする離婚手続きがスムーズに、有利に進められる可能性が高まります。


どのような内容の証拠が良いのか、証拠をどう集めるのか、証拠収集の際の注意点などについて、弁護士が解説します。

1.不倫・浮気の慰謝料請求に証拠は必要か



不倫・浮気の証拠があることで、不貞慰謝料請求を有利に進めることができます。


話し合いや訴訟による不貞慰謝料請求において、相手方が不貞行為を認めていれば証拠は不要です。
逆に、相手方が否認している場合、証拠がなければ話し合いを進めることは難しいです。

しかし、くり返しになりますが「有利に慰謝料請求をおこなう」ためには、有利な証拠集めをしておくことは、問題解決のための対処法として重要な行動と言えます。

なお、不倫・浮気をきっかけに離婚する場合には、不倫をした配偶者に対して離婚慰謝料として請求することも可能です。

 

1-1.不貞行為とは

 

不貞行為とは、本人の自由な意思にもとづき、配偶者以外の相手と性的関係(性行為などの肉体関係、または性的類似行為)をもつことを言います。
また、法律上の離婚原因です(民法770条)。

なお、性行為を伴わない行為であっても「婚姻共同生活を侵害・破壊に導く可能性のある行為」は加害行為として慰謝料を請求できる場合があります(たとえば同棲しているが、性行為及び性的類似行為がない場合)。

ただ、不貞行為として性交渉があったことを示す証拠があることで、慰謝料請求を進めやすくなります。
次に、その証拠となるものについて収集方法とともに解説します。

 

2.不倫・浮気の証拠

 


不貞慰謝料請求のために有利となる証拠は次のものがあります。

 

2-1.写真・動画(映像)

 

デート、性交渉自体やそれら性的関係を推測させるような同じ部屋での宿泊などの写真・画像や、動画(映像)です。

 

  • 性交渉自体
  • 旅行・宿泊先で親密さをうかがわせるもの
  • ホテル・不倫相手の自宅の出入り

 

その画像・動画については、自分のスマートフォン(スマホ)へ転送や、ビデオカメラなどで撮影をおこない証拠として確保します。

その際に、不倫相手の顔や日付、住所(場所)などの状況が分かるようにしておくことで不倫の程度が分かり、慰謝料請求の有利な証拠となります。

 

なお、画像や動画のデータは、編集により元の日時データが編集時点のものに変わってしまうことがあるため注意が必要です。

元のデータは必ず残しておくようにしましょう。

2-2.音声録音


不倫した配偶者と不倫相手との会話や、不倫をした相手との話し合いの内容(不貞行為の自白など)の音声録音は強力な証拠となる可能性があります。

ICレコーダー(ボイスレコーダー)やスマートフォンの録音機能を利用すると良いでしょう。
(例えば、「アイフォン ボイスメモ」「アンドロイド レコーダー」のように、インターネットで検索をすると録音方法を調べることができます。)

参照 │ 不貞行為の自白内容を音声録音する場合の聞き取り

無理やりに発言させるよりも、自然に相手方が発言することを大切に、会話を進めることを心がけましょう。
自白させようと脅迫することや、録音データの変造などはやめましょう。

  • 不貞行為の期間(いつからいつまで)
  • 不貞相手の名前、連絡先
  • 不貞行為の回数
  • 不貞行為のきっかけ(自由な意思でおこなわれたのか)
  • 不貞の相手は既婚者と知っていたか


なお、録音データも編集作業により日時が変わってしまう、偽造・変造ととられかねない可能性があるので注意が必要です。

2-3.メール・手紙


浮気をしていること、性交渉をうかがわせる内容(宿泊、相手宅への訪問など)のやり取りは証拠となりえます。
性交渉について直接的に触れた内容だけではなく、間接的な会話でも性的関係を推認させるものも証拠となります。

なお、単なる日常的な会話は不貞慰謝料請求の証拠とはなりません。

参照 │ 不貞慰謝料請求に有利な証拠となるメール・SNSのやりとり例

 「またお泊りしようね」(性的関係を推認させるもの
 「中絶には同意書が必要だからお願いします」(性的関係を直接立証するもの
 「早く離婚して、一緒になろうね」(既婚者と知っていること
 「奥さん(ご主人)には言えないね」(既婚者と知っていること


スマートフォンやパソコンでのメールなどのやり取りについて、カメラで撮影することが多いです。
この場合、送信日時や配偶者から相手(アドレス)とのやり取りが分かるよう撮影します。

2-4.SNS(Facebook、LINE、Instagram、X(旧Twitter))


SNSやマッチングアプリでのダイレクトチャット・ダイレクトメッセージなどやり取りにおいて、性交渉など親密な交際をうかがわせる内容があれば、不貞慰謝料請求の証拠となります。

この場合の証拠の確保は、メールの時と同じように、画面を撮影するなどの方法によりおこないます
会話だけではなく、やりとりのなかで画像や動画データがある場合には、それらを撮影します

参照記事

 

2-5.通話履歴


スマホ・携帯電話の通話記録や、LINEなどのSNSでの利用履歴は、ほかの証拠とあわせて不貞関係を補強する証拠となる可能性があります。

会話内容は分かりませんが、不貞期間や程度、不貞相手の情報を確保します。

2-6.ホテルの領収書、会員カード


夫婦間においてセックスレスで、ラブホテルに行った身に覚えがないにもかかわらず、ラブホテル、ビジネスホテル、ホテルのレストランなどのレシート(領収書)、会員カード・ポイントカード、サービス券が見つかった場合、不貞関係の証拠となる可能性があります。

スマートフォンの会員アプリがあり、利用明細がわかる場合があります。

2-7.クレジットカードの利用履歴


二人で行ったと思われるホテル、旅行、相手へのプレゼントをうかがわせる高額のブランド品購入などの利用明細やレシートも、不貞関係を示す証拠となる可能性があります。

利用ホテルや旅行先等の情報から、日時や利用人数などを把握することができる場合があります。
(弁護士に依頼するとホテルなどに利用状況の照会をかけることができます。)

これも他の証拠である画像や、メールでの会話などとあわせて証拠とする場合が考えられます。

2-8.産婦人科の診療報酬明細書


不倫相手の女性を妊娠させ、あるいは堕胎させているような事実がわかる資料は性交渉を示す資料となります。

産婦人科への通院が分かる診療報酬明細書、堕胎に関する同意書の控えなどです。
性的関係を直接的に立証する証拠となります。

2-9.交通系ICカードの利用履歴


Suica、PASMOなど入出場などの利用履歴です。

例えば、スマートフォンのiPhoneで提供されているアプリの機能を使えば、カードをスキャンし、その場で利用履歴を確認することができます。

また、交通系ICカードをスマートフォンアプリに登録している場合、そのアプリ上で利用履歴を確認することもできます。
この場合、その画面を撮影するなどしておきます。

浮気相手の自宅への訪問日時の履歴、ホテルの利用履歴などと合わせて不貞関係を証拠となる場合があります。

2-10.カーナビ・ETC、GPSの履歴・地点登録


スマートフォンのGPSによる位置情報共有、ETCカードの通貨履歴、カーナビの地点登録や検索履歴は、他の証拠と合わせて不貞関係を示すものとして使える可能性があります。

例えば、ラブホテルの利用履歴とカーナビの検索履歴が合致する場合などです。

2-11.探偵事務所・興信所の報告書


探偵事務所や興信所作成の調査報告書で、性的関係(性行為または性的類似行為)を推認できる内容のものは、不倫関係を示す証拠として使用できます。
例えば、ラブホテルへの出入りの現場を押さえた写真などです。

不倫をした相手を尾行、張り込み、周辺関係者への聞き込みにより調査をおこなうのが一般的です。

ただ、探偵事務所や興信所の依頼費用は高額になる可能性があります。
また、興信所の費用を損害として認めた裁判例もありますが、慰謝料に上乗せして相手に請求することは難しいことが多いです。
興信所の金額も数十万円~と状況により異なり、高額な調査費用になることもあります。

不貞関係を示す証拠をつかめないリスクや、事前に見積もりと活動範囲を確認し理解しておくことが大切です。

当事務所の依頼者様において、相談者や依頼者の持参する報告書を見ると浮気・不倫の証拠として不十分な内容であったり、追加費用ばかり請求されて一向に証拠を確保できなかったケースもありました。
そのため、調査会社選びは重要です。

なお、不倫・浮気による不貞慰謝料額の相場は、① 離婚する場合 100万円~300万円、② 離婚しない場合 数十万円~100万円程度となっています。
探偵事務所に依頼することで有力な証拠が得られる可能性が高まるというメリットはありますが、高額の費用がかかるため、費用対効果とリスクを踏まえて、よく考えて行動されることをお勧めします。

不貞慰謝料請求が可能かも含めて、事前に弁護士に相談しておくことをお勧めします。

2-12.子どものDNA鑑定、血液型の検査


夫婦間の性交渉により生まれるはずのない血液型や、DNAの一致を見る検査なども不貞関係を示す証拠として利用する場合があります。

2-13.手帳・日記


不倫相手と会った日時などを記載した手帳、スケジュール帳やメモも証拠となります。

不倫相手とホテルで宿泊した日など、手帳に特定の記号を記載していることもあります。
宿泊日、メールなどのやり取り内容、手帳の記載などを突き合わせて確認をおこないます。
実際に、裁判などにおいて証拠として提出することもあります。

ここまで、不倫・浮気の証拠となるケースを解説しました。

なお、複数の証拠集めをしておくことで、単体では不貞行為の証拠とはならなくても、相互に補足しあい有力な証拠となる場合があります。
例えば、性交渉をほのめかすLINEのトーク履歴とホテルの領収書の日付や内容が一致する場合などです。

上記の証拠以外にも身に覚えのない避妊具などの所持、第三者の証言など、不貞関係を示す証拠はあります。
集めた証拠が慰謝料請求のために有用かどうかは、くわしくは弁護士までご相談ください。

3.不倫・浮気の証拠集めの注意点



不倫・浮気の証拠集めの注意点として次のものがあります。

参照│不倫・浮気の証拠集めの注意点

  • 違法な証拠集めはしない
    (盗聴、盗撮、脅迫、強要、窃盗、不正アクセスなど。裁判手続きで証拠能力が否定される可能性がある。)
  • 改ざん・偽造はしない
  • 不貞行為と関連性の低い証拠集め

  • 相手に知られずに証拠を集める

 

3-1.違法な証拠収集


違法に集めた証拠は、裁判手続きによる不貞慰謝料請求の場面で、裁判所から証拠として認められない可能性があります。

また、その証拠集めの行為自体が違法なものとして、刑事罰の対象になる可能性もあります。

3-2.不正なアクセス


よくあるケースは、違法な手段で入手したログイン情報をもって、配偶者の携帯電話・スマートフォンのロック解除をおこなうことです。

違法な手段の例としては、相手が管理しているUSBメモリに勝手にアクセスをして、ログイン情報を取得する場合です。
不正アクセス禁止法に違法するものとして刑事罰を受ける可能性もあります。

いくら不貞行為の疑いが強い場合であったとしても、違法行為は正当化されません。
違法性のない他の方法による不貞行為を証明できないかを検討してみてはいかがでしょうか。

3-3.盗聴、不法な住居侵入


正当な理由もなく不倫相手の自宅や職場に押し掛ける行為や、盗聴器をしかけるなどの行為は犯罪行為です。

感情的に納得がいかない場合でも、強引な行動にでることがないように気をつけましょう。

参照│犯罪行為にあたるケース

  • 許可なく職場訪問をし、退去を求められても帰らない

    不退去罪、建造物侵入罪

  • 不倫相手の自宅内に押し掛ける

    住居侵入罪

  • 職場に押し掛け、不倫の事実を言いふらす

     >名誉棄損

 

3-4.脅迫


不倫をした配偶者やその相手を脅迫する、無理やり謝らせようとした場合には脅迫罪、強要罪といった刑罰にあたります。

3-5.偽造・変造


画像・動画データ、音声データの編集により、意図せぬ偽造・変造になってしまう可能性があります。

自分に有利な部分のみを抜き出して編集することもやりがちな行動です。

しかし、裁判手続きで証拠として提出する場合、動画データや音声データは前後の流れを合わせて重要な証拠となります。
元データをそのまま残しておくことが大切です。

3-6.相手に知られずに証拠を集める


証拠を確保していない時点で感情のまま相手方に「不倫してるだろう」とつめ寄った結果、不倫・浮気を否認された上に警戒を招いてしまい、証拠を確保できなくなったケースもあります。

まずは、しっかりと証拠を集めてから、請求をおこなうことが大切です。

4.証拠がない場合の不貞慰謝料請求の方法


証拠がない場合でも、不貞慰謝料請求が可能な場合があります。

4-1.話し合い


浮気・不倫の証拠が不十分な場合でも、任意の話し合いで解決できる可能性があります。

相手方との話し合いの結果、不貞関係を認めるなど、自白が得られることもあります。
不倫を認めて、不貞慰謝料の支払い条件について合意できた場合には、念書・誓約書など書面の形にしておきます。

なお、公証役場で作成する公正証書にしておくと良いでしょう。
金銭の未払いがある場合に、訴訟をしなくても、差押えなどの強制執行手続きが可能です。

公正証書は「公証人(こうしょうにん)」と呼ばれる元裁判官などの法律のプロにより法的に適切な書面として作成するため、あとで「言った、言わない」のトラブルを回避することができます。

4-2.弁護士に依頼する


弁護士会を通して関係各所に「23条照会」と呼ばれる問合せをすることができます。

例えば、宿泊施設への宿泊情報や、通話履歴からの携帯電話キャリアへ契約者情報の照会などです。
これらの照会を通して、不倫に関する情報を確認することもできます。

しかし、23条照会に対する回答は義務ではありません。
そのため、照会先からの回答を得られず空振りに終わり、費用だけがかかるというリスクもあります。
また、こうした調査だけを弁護士に依頼することはできず、不貞慰謝料請求の代理交渉や訴訟提起を依頼する必要があります。

5.まとめ




多くの方は、不倫・浮気をにおわせる不自然な行動をきっかけに、不貞行為を立証するために有力な証拠集めをおこないます。

性交渉の写真・動画(映像)・音声データがあれば、直接的に不貞行為が分かる確実な証拠となります。

しかし、直接的な証拠が残されていることはあまりありませんし、有力な証拠でないものを集めても意味がありません。
不倫・浮気の事実が明らかになるような決定的な証拠を集めることが非常に重要です。

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