交通事故の示談交渉で注意するポイント
交通事故の被害者が加害者と賠償金の示談をする際に注意すべきポイントがあります。
示談交渉開始は症状固定・治療終了後
示談交渉は、治療の終了または後遺障害等級の認定結果が出たあとにおこないます。
ただし、自動車や腕時計、衣服などの物件損害(物損事故)は、損害額の算定に必要な資料が揃っていて、過失割合の判断もできる状態であれば、治療の状況に関わらず示談交渉を始めることが可能です。
治療の結果、後遺症が残った(症状固定)場合は、後遺障害等級の認定を受けてから、加害者の保険会社と示談交渉します。
後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料は後遺障害等級の認定結果によってその有無や金額が決まるので、その結果が出ない時点では保険会社へ請求すべき損害額が計算できないためです。
逆に、治療の結果、後遺症が残らなかった(治癒)場合は、後遺障害等級は関係なく、治療の終了までの状況から保険会社へ請求する損害額を計算できるので、治療が終了すればそのまま示談交渉へ入ることになります。
なお、交通事故の直後に加害者から示談交渉をもちかけられたとしても、その場で応じてはいけません。
治療が終了していないうちは損害額が計算できず、示談が成立してしまうと追加の損害額の請求が難しく、適正な賠償金を受けられないという二次被害に遭ってしまうおそれがあります。
治療中の示談には応じない
治療中は損害額が確定できないので、治療中の示談には応じないでください。
後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料は、治療が終わり症状固定ののち、後遺障害等級の認定を受けてからでないと計算できません。
仮に治癒した(後遺症が残らなかった)としても、治療費や通院交通費はもちろん、入通院慰謝料など治療が終了するまで損害額を計算できないからです。
このように治療中は損害額を計算できないので、治療中に示談すると本来受け取れる賠償金が大幅に減ってしまうリスクがあるのです。
治療が終了すれば、あなたの賠償額をシミュレーションすることは可能です。
適正な賠償金を受け取るためにも、一度ご相談ください。
示談金(賠償金)の増額可能性をチェック
示談交渉において、被害者は、保険会社の提示額が適正かどうか検討し、必要に応じて反論や賠償額を計算し直し提示する必要があります。
ただ、被害者は交通事故に一生に一度あうかどうかという方がほとんどですので、示談交渉のときに検討すべきポイントが分からないと思います。
そこで、ここでは示談交渉の際、被害者が最低限気をつけておくべきことを解説します。
後遺障害等級が適正かの確認
治療の結果、後遺症が残る場合、後遺障害等級の認定申請をして、損害保険料率算出機構の判断を受けます。
後遺障害等級の認定申請の方法は、① 保険会社に任せる(事前認定)、② ご自身で行う(被害者請求)の2通りあります。
- 保険会社に任せる(事前認定)方法は、主に保険会社が手続きを進めるため、被害者の負担が軽いというメリットがあります。 しかし、保険会社は後遺障害等級が認定されることで賠償額が増える立場ですので、その保険会社に提出書類のチェックや適切な資料の追加などを期待できるか疑問があります。さらに、被害者が申請する場合と異なり、保険会社との示談が成立するまで、後遺障害等級の認定に伴う自賠責保険金を受け取ることができないというデメリットがあります。
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ご自身で行う(被害者請求)の方法は、保険会社に任せる場合と比べて手間がかかりますが、提出書類に問題のある場合に対応できます。また認定獲得に有効と思われる資料の追加などもできるため、適切な後遺障害等級を獲得できる可能性が高まります。
さらに、後遺障害等級が認定された場合、等級認定に伴う自賠責保険金を保険会社との示談に関係なく受け取ることができる点でもメリットが大きいと言えます。
参考として、自賠責保険金の限度額に関する表を掲載します。
被害者請求であれば保険会社との示談に関係なく限度額の範囲内の自賠責保険金を受け取ることができますが、事前認定の場合は保険会社との示談が成立するまで受け取れません。
損害の内容 | 限度額 |
---|---|
傷害による損害 | 120万円(被害者1名につき) |
後遺障害による損害 | ① 神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する障害 ・常時介護を要する場合(第1級) 4000万円 ・随時介護を要する場合(第2級) 3000万円 ② ①以外の後遺障害 ・第1級 3000万円 ~ 第14級75万円 |
死亡 | 3000万円 |
引用 限度額と保障内容(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment.html
当事務所にご依頼いただいた場合は、弁護士が症状や治療経過などを詳細に確認した上で、提出書類のチェック、有効と思われる資料の追加などをした上で、被害者ご本人の代理人として被害者請求を行います。
損害項目の確認
賠償金の項目は、治療関係費/通院交通費/休業損害/入通院慰謝料/後遺障害逸失利益/後遺障害慰謝料など多岐に渡ります。
示談交渉を行う際は、加害者の保険会社任せず、被害者がこれらの項目を正しく理解する必要があります。
当事務所にご相談に来られた方に、保険会社からの提示内容を見せていただくと、項目自体が一部漏れていたケースもありました。
どのような項目があり、どの項目を請求できるか、判断が難しい場合には、当事務所にご相談ください。ご状況に応じて請求可能な損害項目に漏れがないかをお答えします。
なお、当事務所にご依頼いただければ、弁護士が保険会社に対して請求の根拠を明示しながら示談交渉を行いますので、適切な内容での解決を図れます。
過失割合の確認
過失割合は、加害者の保険会社から受け取る賠償額にとって非常に大きな影響を与えます。そして、示談交渉では被害者と加害者が協議して過失割合を決めることになります。
営利企業である保険会社は賠償額を減らすため、被害者の過失が大きいと主張することも珍しくありません。しかし、過失割合に関する知識を被害者が持っていなければ、保険会社に反論することは難しいでしょう。
過失割合に関する書籍として有名なのは、別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事交通訴訟研究会編・判例タイムズ社)です。この本は、交通事故の典型的なパターンに関する過失割合を記載しており、弁護士や保険会社のほか、裁判官も参考にしています。
しかしながら、個々の事故状況は異なりますので、この本に掲載されているケースを前提としても、過失割合が一義的に決まるわけではありません。
一定の修正を必要とすることがあります。
また、問題となっている交通事故に当てはまるものがこの本に載っていないこともあります。その場合、過去の裁判例など他の資料から判断します。
当事務所の代表弁護士は、保険会社側の代理人経験を豊富に有しております。保険会社の事情にも明るく、適切な過失割合を検討して示談交渉を行いますので、安心してお任せいただけます。
裁判基準による賠償額の算定
交通事故の賠償金を算定するための基準は3つあり、① 自賠責基準、② 任意保険基準、③ 裁判基準(弁護士基準)です。
このうち、① 自賠責基準、② 任意保険基準は、③ 裁判基準より通常低いので、加害者の保険会社にとって都合の良いものと言えます。
① 自賠責基準は、強制加入の自賠責保険から支払われる保険金を算定するためのもので最低限です。そして、② 任意保険基準は各保険会社が設けている基準で、① 自賠責基準を多少上回るくらいです。保険会社は営利企業で賠償額を抑えることが自社の利益になるので、算定基準も低く設定されるからです。
これらに対し、③ 裁判基準が被害者にとって最も有利な基準であるのが通常です。 ③ 裁判基準は、交通事故裁判の中で確立された賠償金の相場です。「裁判」とあるとおり裁判所が使用する基準ですが、弁護士が代理人として示談交渉する場合はこの③ 裁判基準をもとに進めることができます。そのため、③ 裁判基準は弁護士基準とも呼ばれます。
③ 裁判基準は① 自賠責基準の約2倍となることもあるので、3つの基準について理解しないまま安易に保険会社との示談に応じてはいけません。
示談書の記載内容の確認
加害者の保険会社と賠償額について合意して示談を成立させるとき、通常は「免責証書」という保険会社所定の書式を使用するので、記載項目の漏れはあまり心配ありません。
記載項目は、当事者の情報/交通事故の特定/被害内容の特定/支払いに関する情報/清算条項などです。
なお、加害者が任意保険に加入していない場合は、当事者が一から示談書を作成しなければなりません。
示談書(免責証書)が完成してしまったら、問題のある内容であっても、あとからやり直すことが原則できません。
示談前であれば弁護士への依頼が可能ですので、少しでもご不安のあるときは当事務所にご相談ください。
示談交渉の流れ
示談交渉は、①ケガのあるときは治療終了後または後遺障害等級の認定結果後、② 物件損害は、損害額の算定に必要な資料が揃い、過失割合の判断もできる状態であれば、治療の状況に関わらず開始できます。なお、死亡事故によりご家族・ご親族の亡くなられた場合、すぐに示談交渉に入ることもできますが、葬儀や四十九日の法要が終わったあとに弁護士へご相談されるケースが多いです。
示談交渉の解決期間
個別の事情によって解決までの期間は異なります。 物件損害のみやや、ケガの程度が小さく後遺症もないケースなどでは、比較的短期間で示談が成立することもあります。
死亡事故や後遺障害が重い事故といった賠償額が高くなるケースや、過失割合の判断が難しいケースなどは、示談交渉が難航して、成立するまで時間がかかりやすいと言えます。
なお、ケガのあるとき、示談交渉の開始は早くとも治療が終わった後(後遺症が残っている場合は、さらに後遺障害等級の認定結果が出た後)なので、事故発生日から数えるとある程度の長さがあるのは避けられません。「事故から何か月経ったか」といった見方で示談交渉にかかっている期間の長さを判断することは間違った認識につながるので注意しましょう。
示談交渉が決裂した場合
加害者の保険会社との示談交渉が決裂した場合は別の手続きによる解決を目指す必要があります。主に利用される手続きは次のとおりです。
公益財団法人交通事故紛争処理センターの和解あっ旋・審査手続
公益財団法人交通事故紛争処理センターは、交通事故に関する紛争処理を目的としたADR機関です。ADR(裁判外紛争処理手続)とは、裁判によらず法的なトラブルを解決する方法などを言います。
交通事故紛争処理センター以外のADR機関として、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが挙げられます。
交通事故紛争処理センターでは、相談担当弁護士が仲立ちして、被害者と保険会社が賠償額について合意できるようあっ旋します。
ただし、あくまで和解あっ旋に強制力はないので、合意できないこともあります。
その場合、審査を申し立てることができ、法律学者や裁判官経験者、弁護士といった複数人が合議で裁定(結論)を出すことになります。保険会社は裁定を尊重しなければなりませんので、実質的な拒否権は被害者のみにあります。また、日弁連交通事故相談センターでも、和解あっ旋や審査をしています。
和解あっ旋による解決率は、交通事故紛争処理センターで90%弱、日弁連交通事故相談センターで80%弱です。
裁判手続
裁判所に訴訟提起して解決を目指す方法です。
なお、「調停」という裁判官と調停委員が仲立ちをして裁判所で話し合う方法もありますが、交通事故紛争処理センターと違い審査手続きがなく、費用もかかりますので、あまり活用されていない印象です。
裁判は、お互いが言い分や証拠を提出して、その後に判決が出される手続きですが、必ずしも判決まで行われるわけではありません。
裁判手続きを進めるなかで、裁判所が和解案を提示して、被害者、加害者ともこれに同意して解決するケースのほうが比較的多いと言えます(訴訟上の和解)。
裁判所からの和解案は、当事者尋問や証人尋問の直前に出されることが多く、訴訟上の和解で解決する場合は被害者本人が裁判所で尋問を受けないケースも珍しくありません。
なお、裁判所は、通常、裁判基準に従って賠償額を算定します。ただ、示談交渉でも弁護士であれば裁判基準に沿った賠償額で進められることが多いので、裁判手続きならではの大きなメリットと言えるかは微妙です。
示談交渉で保険会社に代理人がつく場合
示談交渉は主に加害者の保険会社の担当者が行いますが、この段階から弁護士(保険会社の顧問弁護士)が出てくることもあります。
被害者が示談内容に応じない
被害者が加害者の保険会社からの提示額に応じないときに、担当が保険会社の顧問弁護士に代わることがあります。
賠償額が高い
死亡事故や重度の後遺障害等級が認定された事案は賠償額が高くなるので、シビアな交渉を行うため保険会社の顧問弁護士が出てくる可能性があります。
そのほか(長期の通院期間など)
通院が長期間に及んでいる場合、被害者に治療を打ち切らせて賠償に向けて話を進めるため、顧問弁護士に依頼して被害者を訴える(債務不存在確認請求訴訟)こともあります。
裁判を起こす直前に、顧問弁護士が被害者へ示談交渉に応じるか問い合わせるケースが見られます。
加害者の保険会社の担当者は裁判をすることができないので、保険会社が裁判を予定したときは必ず弁護士に依頼します。
また、保険会社の担当者が被害者の勢いに負けそうになったり、不出来な対応を被害者から指摘されてそんぽADRセンターへ苦情申立てをされた場合なども、顧問弁護士に切り替わるきっかけになり得ます。
以上のとおり、示談交渉の段階でも保険会社の顧問弁護士が出てくることはあります。そして、一般の方が顧問弁護士と対等に渡り合うのは難しいでしょう。そこで、顧問弁護士に押し負けないため、あなた自身にも代理人弁護士をつけることをご検討されてはいかがでしょうか。
弁護士依頼のメリット
示談交渉で弁護士に依頼するメリットは、数多くあります。
そこで、そのメリットについてご説明します。
弁護士費用特約の利用
弁護士に依頼すると費用がかかるため、「費用倒れにならないか。」「手元に残る賠償金が減らないか。」と心配される方もおられると思います。
そこで、被害者様やご家族様は、まず「弁護士費用特約」と呼ばれる自動車保険や火災保険などに付帯される特約がないか、ご確認ください。
もし、弁護士費用特約を利用できる場合、通常、法律相談料は10万円、弁護士費用は300万円まで、ご自身の保険会社がカバーしますので、多くの場合、実質費用負担ゼロで弁護士に依頼できます。
とある自動車保険取扱いの保険会社の調査では、自社の契約のうち6割ほどで弁護士費用特約が付帯されているとの結果があります。
自動車購入時や車検の際に、ディーラーで「保険契約・更新」している場合、意識していないうちに弁護士費用特約が付帯されていることがあります。まずは、ご自身やご家族の保険についていないかご確認ください。
当事務所は、弁護士費用特約のご利用が可能です。
また、弁護士費用特約のない場合でも、完全成功報酬制・初期費用ゼロでご依頼いただけますので、ご依頼時の負担はありません。
さらに、ご相談時に弁護士が賠償額の見込みについて詳しくご説明し、費用倒れになるリスクをできる限り減らします。
まずはお気軽にご相談ください。
保険会社は示談交渉の相手方であって味方ではない
事故直後は加害者の保険会社の担当者の対応もある程度良いことがあるため、被害者が弁護士にご相談・ご依頼する必要を感じにくい場合があります。
しかし、保険会社は示談交渉の相手方であって味方ではありません。電話での対応の良さと賠償額の適正さは、無関係です。保険会社からの提示額に疑問を抱いていなかったものの「念のため」と考えて当事務所へご相談に来られた方で、提示額と適正な賠償額との差を知って驚かれたケースも珍しくありません。
示談交渉において、ご自身の味方になってくれる「弁護士」の必要性は高いと言えます。
保険会社と対等に交渉できる
加害者の保険会社の担当者は、交通事故のプロです。
そこに一生に一度交通事故にあるかどうかの、知識や経験に乏しい被害者本人が交渉しても、圧倒的に不利なのは明らかです。
適正な賠償金を獲得したい、ご自身のお気持ちやお考えをしっかり主張したいという思いに対応できるのは弁護士です。
後遺診断書作成からフルサポート
事故直後、入通院時から、弁護士が将来の賠償金の獲得を見据えたアドバイスを行います。
さらに、適切な後遺障害等級の認定を受けるため、提出書類のチェックや有効な資料の追加のほか、各種手続きについてフルサポートします。
裁判基準での交渉
原被害者にとって通常最も有利な賠償額の基準である「裁判基準」に従った示談交渉を行います。
日ごろから業務として交渉や裁判に臨んでいる弁護士だからこそ、被害者が正しい対応を受けられるための、賠償金を含めたタフな交渉をすることができます。
損害項目のチェック
いったん示談してしまうと、原則、あとからやり直すことはできません。
そのため、請求できるのに漏れている損害項目はないか、チェックすることが重要です。
交通事故の案件処理に長けた弁護士は、個別の事案に応じて請求可能か判断することができます。
後遺障害がなくても依頼メリットがある
治療の結果、治癒して後遺症が残らなかった場合でも、休業損害や入通院慰謝料などを増額できる可能性があります。
特に、弁護士費用特約がついている場合は弁護士費用の負担なく依頼できますので、費用倒れを心配せず適正な賠償金の獲得を目指すことができます。
示談交渉の注意ポイントと弁護士依頼のメリット(まとめ)
適正な賠償金の獲得を目指す場合、弁護士へ依頼するメリットは大きいです。
また、弁護士に依頼すれば、示談交渉だけでなく、治療中から加害者の保険会社への対応全部を任せることができます。十分な治療や適切な後遺障害等級の認定も受けられ、解決までフルサポートしてもらいます。
弁護士費用特約を利用すれば、原則、費用負担なく依頼できます。
古山綜合法律事務所では、示談成立前であればいつでも、ご相談、ご依頼できます。
費用のお見積りも可能ですので、まずはお気軽にご相談にお越しください。