自己破産で官報に掲載されるのは本当?仕組みからリスクまで徹底解説


借金問題

執筆者 弁護士 古山 隼也 (こやま しゅんや)


  • 大阪弁護士会所属 登録番号 第47601号

略歴

清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁(平成18年まで勤務)/京都大学法科大学院卒業/古山綜合法律事務所 代表弁護士

講演・メディア出演・著書

朝日放送「キャスト」/弁護士の顔が見える中小企業法律相談ガイド(弁護士協同組合・共著)/滝川中学校 講演「インターネットトラブルにあわないために-トラブル事例を通じて-」


大阪市職員、大阪・京都の法律事務所の勤務経験を活かし、法律サービスの提供を受ける側に立った分かりやすい言葉で説明、丁寧なサポートで、年間100件以上の問題解決をおこなっています。

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この記事の目次(クリックで開閉)

自己破産で官報に掲載されるのは本当?仕組みからリスクまで徹底解説


自己破産をすると、官報に名前や住所が掲載されるのは事実です。
しかし、一般の人が官報を目にする機会は非常に稀なため、周囲に知られることはほぼありません。


本記事では、「官報」の仕組みから、掲載される情報、バレるリスクと対策を詳しく解説します。

1. まず知っておきたい「官報」とは何か


官報(かんぽう)は、法律や政令の制定、重要な情報を社会に周知するために、国(国立印刷局)が発行する唯一の機関紙です
いわば「国の広報誌」や「公式な新聞」のようなものです。

一般の新聞や雑誌とは異なり、行政機関の運営に関わる情報を正確かつ迅速に国民へ伝える役割を担っています。
日刊(行政機関の休日を除く)で発行されており、全国の官報販売所で購入できるほか、インターネットでも24時間いつでも閲覧可能です。

なお、自己破産申立て時に官報掲載費用を裁判所に納めます。

1-1. 官報の役割と発行形態


官報の役割は多岐にわたり、主に以下の情報が掲載されます。

  • 法令の公布 新しい法律や政令が決まった時の通知
  • 人事異動 省庁の公務員や裁判官などの人事
  • 公告 政府調達や、会社法・破産法などの法律に基づく告知


形態としては、毎日発行される「本紙」に加え、記事が多い場合に発行される「号外」、緊急時に出される「特別号外」などがあります。


自己破産に関する情報は、主に号外に掲載されます。

1-2. 官報が公開される目的


破産者の個人情報を官報に掲載する主な目的は、「利害関係者(債権者など)への周知」です。

1-3. 破産者名簿との違い


よく混同されるのが「破産者名簿」です。
両者は全く目的が異なります。

項目 官報 破産者名簿
管理主体 国(国立印刷局) 本籍地の市区町村(役所)
掲載される場合 自己破産手続きをした場合 免責不許可の場合など
(自己破産をした全ての人が掲載されるわけではない)
閲覧可能性 誰でも閲覧可能 原則非公開(本人や代理人のみ)
掲載のタイミング 手続き開始時と免責許可時 破産手続中から免責確定まで
目的 債権者への周知 身分証明の発行(資格制限の確認など)


破産者名簿は、本籍地の役所で管理される非公開のリストです。


重要なポイントとして、自己破産をしてスムーズに「免責(借金の帳消し)」が許可されれば、破産者名簿には載りません。
免責不許可の場合など、限られたケースのみ掲載されます。

一方、官報は手続き上必ず掲載されます。
一般の方が「破産がバレる」と心配する場合、破産者名簿ではなく官報です。

2. なぜ自己破産の情報が官報に載るのか


自己破産手続において官報公告が行われる法的根拠は、破産法にあります。
これは法律で定められた義務であり、弁護士に依頼しても、裁判所にお願いをしても、掲載を拒否することはできません。

2-1. 破産法に基づく公告の義務


破産法には、手続きの重要な節目において「公告(こうこく)しなければならない」と定められています。

  • 破産手続開始の決定(破産法第32条
    裁判所が破産手続きの開始を決めたとき
  • 免責許可の決定(破産法第252条など
    借金の支払義務を免除する決定が出たとき

ここでの「公告」の手段として、官報への掲載が採用されています。

2-2. 債権者保護の観点からの必要性


官報に掲載される最大の理由は、債権者の権利を保護し、公平な手続きをおこなうためです。


自己破産は債務者の返済義務を免除する一方で、債権者にとっては『損失』を意味します。
そのため、国は官報を通じて「異議があれば申し出てください」、「債権を持っている人は名乗り出てください」と広く呼びかけ、債権者が手続きに参加する機会を確保しています。

これは債務者への嫌がらせや見せしめではなく、債権者の権利を保護するために必要な法的手続きです。

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3. 官報への掲載タイミングと回数



自己破産で官報に掲載されるのは基本的に合計2回(管財事件は3回)です。
個人の方で利用されることが多い、同時廃止事件をもとに説明します。

3-1. 破産手続開始決定時(1回目)


1回目は、裁判所に自己破産を申し立て、審査を経て「破産手続開始決定」が出たタイミングです。
実際の掲載日は、裁判所で決定が出てから約2週間後が目安です。

  • 掲載内容 「破産手続きを始めます」という宣言
  • 意味合い 債権者に対し、債権の届け出をうながす

3-2. 免責許可決定時(2回目)

 

2回目は、手続きの最終段階、「免責許可決定」が出たタイミングです。
これも決定が出てから約2週間後に掲載されます。

  • 掲載内容 「借金の返済義務を免除(免責)します」という決定
  • 意味合い 債権者に対し、この決定に不服がある場合の申し立て期間の周知

3-3. 同時廃止・管財事件による違い


自己破産には、財産がほとんどない場合の「同時廃止」と、一定の財産がある場合の「管財事件」の2種類があります。

同時廃止の場合

1回目と2回目の掲載間隔は、早ければ2〜3ヶ月程度です。

  • 1回目 破産手続開始決定時
  • 2回目 免責許可決定時

管財事件の場合

財産の調査や換金に時間がかかるため、掲載の間隔が半年〜1年以上空くこともあります。
また、債権者集会や配当などの関係で掲載回数が増えます(3回になる)。

  • 1回目 破産手続開始決定時
  • 2回目 破産手続廃止(または終結)決定時
  • 3回目 免責許可決定時

4. 官報に掲載される個人情報の範囲


「官報には何が書かれるのか?」
ここが最も気になるポイントでしょう。

電話番号や勤務先、借金の総額や理由は掲載されません。

掲載される主な情報は以下の通りです。

  • 事件番号
    例:令和〇年(フ)第〇〇〇号
  • 住所
    住民票上の住所、または現在居住している住所。
  • 氏名
    旧姓は記載されないのが一般的ですが、申立書に記載すれば載ることもあります。
  • 決定の主文
    「債務者について破産手続きを開始する。」「債務者について免責を許可する。」等の結論。
  • 決定の年月日
    破産手続きの開始決定については、区切りの時間を明確にするため時間まで記載されます。例 令和7年12月12日午後17時00分
  • 裁判所名

 

参照 官報の掲載例

■破産開始決定(個人の破産管財事件の場合)

令和7年(フ)第●●●号
大阪府大阪市北区〇〇〇〇〇丁目〇番〇号
債務者 逢坂 四郎
1 決定年月日 令和7年11月18日午後2時
2 主文 債務者について破産手続を開始する。 
3 破産管財人 弁護士〇〇 〇〇
4 財産状況報告集会・廃止意見聴取・計算報告の期日 令和8年1月20日午前11時
5 免責意見申述期間 令和8年1月19日まで
大阪地方裁判所第6民事部

■免責決定

令和7年(フ)第●●●号
大阪府大阪市北区〇〇〇〇〇丁目〇番〇号
債務者 逢坂 四郎
1 決定年月日 令和8年〇月〇日
2 主文 債務者について免責を許可する。
大阪地方裁判所第6民事部

4-1. 氏名・住所・生年月日などは含まれるのか


氏名・住所は個人を特定し、債権者が正しく権利を行使するために必要不可欠な情報として掲載されます。

氏名・住所 プライバシー保護の観点から心配される方も多いですが、必ず掲載されます。
住所は「〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号」まで詳細に記載されます。
生年月日 掲載されません。

4-2. どれくらいの期間閲覧可能か


紙の官報は図書館等で永続的に保存されますが、インターネット上での公開期間は以下の通りです。

インターネット版官報(無料) 直近90日間分の記事が公開されています。
ただし、期間経過後はプライバシーの配慮が必要な一部の記事の閲覧・ダウンロードはできません。
参照リンク 内閣府「官報」
官報情報検索サービス(有料) 昭和22年5月3日以降の官報がデータベース化されており、会員登録すれば過去分も検索可能です。
ただし、以前は可能であった個人名での検索は、プライバシー保護のため過去の氏名・住所をもとに検索ができなくなりました。

つまり、インターネットで無料・匿名で誰でも見られる期間は「掲載から90日間(約3ヶ月)」に限られます。

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5. 官報公告後の情報の調べ方・検索方法


一般の人があなたの情報を官報で見つけるには、どのような手段があるのでしょうか。

5-1. インターネット版官報や図書館での閲覧


最も手軽なのは「インターネット版官報」です。
スマホやPCから無料でアクセスできますが、以下の特徴があります。

画像(PDF)形式が基本 Googleなどの検索エンジンで「氏名」を検索しても、官報のPDFの中身まではヒットしにくい構造になっています。
日付ごとの掲載 「〇月〇日の官報」という形で掲載されているため、「いつ載るか」を知らない人が、偶然あなたの名前を見つけることは極めて困難です。

また、都道府県立図書館や国立国会図書館には紙の官報がストックされていますが、わざわざ図書館に行って過去の官報の「号外」を隅から隅まで読む一般人はまずいません。

5-2. 官報情報検索サービスの有料利用


「官報情報検索サービス」という有料のデータベースがあります。
これを使えば、官報を一括検索できます。

しかし、このサービスは主に信用情報機関、金融機関、市役所の税務課、不動産業者、弁護士等の専門職が業務利用するものです。

利用には会員登録と利用料(月額数千円)が必要であり、興味本位で一般人が契約しているケースは非常に稀です。

5-3.その他官報の閲覧方法


上記以外に、官報の閲覧方法は次のものがあります。

官報の購入 全国の各都道府県にある官報サービスセンターで、紙の官報を購入することも可能です。
官報の掲示 災害・通信障害等により官報発行サイトで官報を発行できない状況が生じた場合、書面官報を国立印刷局本局(東京都港区虎ノ門 2‒2‒3)の敷地内に設置した掲示場に掲示されることがあります。

6. 破産者マップ・新破産者マップとは?


官報そのものよりも、官報の情報を二次利用したサイトの方が脅威に感じるかもしれません。

過去に社会問題化した「破産者マップ」について解説します。

6-1. 過去に存在した破産者マップの問題点


数年前、官報に掲載された破産者の住所と氏名をGoogleマップ上にピン留めして公開する「破産者マップ」というサイトが登場しました。

これは、視覚的に近所の破産者がわかってしまうため、プライバシー侵害に当たるとして大きな批判を浴び、その後閉鎖されました。

6-2. データ流出リスクとその対策


その後も類似のサイト(新・破産者マップなど)が一時的に現れては消えるということもあります。
これらは個人情報保護法に違反する違法性の高いサイトです。

もし自身の情報が掲載されているのを見つけた場合、慌てずに弁護士へ相談し、削除請求を行うのが基本の対策となります。

7. 官報に掲載されても自己破産がバレにくい理由


実態として「官報が原因で家族や会社にバレる」ケースは非常に少ないのが現実です。
その理由を整理します。

7-1. 官報を日常的に閲覧する人は少ない


一般の方で、官報を日常的にチェックしている人はほぼいません。

官報の主な読者は、公務員、不動産会社、金融機関の担当者、法律事務所のスタッフなど、仕事で確認する必要がある人に限られます。
一般の友人も、会社の同僚も、隣の住人も、官報の存在すら知らないことがほとんどです。

7-2. 検索エンジンではヒットしにくい


無料のインターネット版官報はPDFデータであり、Google検索などで「(あなたの名前)」と検索しても、官報のページが直接上位に表示されることはありません。

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8. 官報掲載のデメリットと注意点


「バレにくい」とはいえ、リスクがゼロではありません。
注意すべき具体的なデメリットを知っておきましょう。

8-1. 住所・氏名から内情を推測される可能性


官報には「借金の理由(浪費、ギャンブル、生活苦など)」は記載されません。


しかし、住所と氏名が載ることで、もし見られた場合には「この時期にお金に困って法的手続きをした」という事実自体は伝わってしまいます。

8-2. 勤務先・家族に知られる可能性の考え方

 

勤務先 一般的な企業であれば、まず知られることはありません
ただし、金融機関、保険会社、警備会社、公務員など、一部の職種では、業務の一環として人事部が官報をチェックしている可能性があります(破産すると資格制限にかかるため)。

家族

官報経由でバレることは稀です。
それよりも裁判所からの通知郵便物を見られたり、同居家族の収入証明書の提出を求められたりする過程でバレるリスクの方が高いです。

8-3. DMや勧誘が届くリスク


ヤミ金(違法業者)などは、官報の情報をリスト化し、「他では借りられないあなたに融資します」といったダイレクトメール(DM)を送りつけてくることがあります。


ただ、絶対に連絡してはいけません。
これらは弱みにつけ込む詐欺的な勧誘です。
闇金は、消費者金融以上に高額の金利で貸し付けるもので、滞納した場合には会社や家族に連絡があるなど迷惑をかける可能性があります。

また、2回目の破産は認められなかったり、費用も高くなったりする可能性があります。

9. 官報掲載情報は削除できる?


「お金を払えば消せる?」「時間が経てば消える?」
こうした疑問について、解説します。

9-1. 官報からの削除は原則不可能


官報は公文書としての保存義務があるため、原則として掲載情報の削除はできません。


一度掲載された紙の官報は、国立公文書館などで破棄されない限り永年保存されます。

9-2. 過去のバックナンバー閲覧への対処法


官報そのものを消すことはできません。
しかし、インターネット上の検索結果(違法サイトなど)に対しては削除請求が可能です。


また、「時間が解決する」側面もあります。
無料のインターネット官報は90日で閲覧できなくなり、有料検索をする人も、わざわざ5年も7年も前の情報を、特定の理由なく調べる可能性は低いでしょう。

10. 官報掲載よりも大切な自己破産のメリット


プライバシーを守りたい方にとって、官報掲載はデメリットです。
ただ、大きなメリットがあります。

10-1. 借金が免責される意義


自己破産の最大のメリットは、何と言っても「借金がゼロになる(免責)」ことです。
毎月の返済に追われ、精神的に追い詰められた生活から解放されることは、官報に載るリスクに比べて大きな利益です。

10-2.取り立てや、給与差押えの停止


自己破産申立てにより、債権者からの取り立て、裁判所の強制執行(財産の差押えなど)の手続きが停止します。

破産手続開始決定以降に得た収入は、自由財産となります。
早めに債務整理に取り組むことで、財産の減少を防ぐことができ、生活の立て直しも早くなります。

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11. Q&A:自己破産と官報にまつわる疑問まとめ


最後に、無料相談でもよくある質問をQ&A形式でまとめました。

11-1. 官報に掲載されたら一生残るの?


A. 記録としては永年残ります。
図書館等の紙媒体やデータベースには記録として残ります。
しかし、時間の経過と共に、実生活への影響へのリスクは低くなると考えられます。

11-2. 家族の情報も官報に載る?


A. 家族の名前は載りません。
掲載されるのは破産を申し立てた本人の情報のみです。

ただし、家族が「連帯保証人」になっている場合は、家族も返済義務を負うため、家族自身も自己破産を申し立てた際にはその名前が載ることになります。

11-3. 自己破産せずに官報掲載を避ける方法はある?


A. 任意整理なら官報に載りません。
債務整理には、自己破産のほかに「任意整理」や「個人再生」があります。

任意整理 裁判所を通さず交渉するため、官報には一切載りません。

個人再生 借金を大幅に減額する手続きですが、官報には載ります(自己破産と同様)。



「絶対に官報に載りたくない」のであれば、任意整理が可能かどうか、弁護士や司法書士に相談してみることをお勧めします。

12.まとめ


自己破産で官報に掲載されるのは避けられませんが、それだけで「会社や近所にバレる」「人生が終わる」と考えるのは過度な不安です。


「官報が怖い」という理由だけで自己破産を躊躇しているなら、まずは一度、法律事務所の無料相談などを利用し、専門家の話を聞いてみてください。
「もっと早く相談すればよかった」と思える解決策が、きっと見つかるはずです。

  • ✅ 官報を見るのはごく一部の職業の人だけ
  • ✅ 無料のインターネット公開は90日間で終わる
  • ✅ 官報よりも、借金を放置するリスクの方が遥かに高い


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