不倫・浮気の慰謝料相場と請求方法


不貞慰謝料

執筆者 弁護士 古山 隼也 (こやま しゅんや)


  • 大阪弁護士会所属 登録番号 第47601号

略歴

清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁(平成18年まで勤務)/京都大学法科大学院卒業/古山綜合法律事務所 代表弁護士

講演・メディア出演・著書

朝日放送「キャスト」/弁護士の顔が見える中小企業法律相談ガイド(弁護士協同組合・共著)/滝川中学校 講演「インターネットトラブルにあわないために-トラブル事例を通じて-」


大阪市職員、大阪・京都の法律事務所の勤務経験を活かし、法律サービスの提供を受ける側に立った分かりやすい言葉で説明、丁寧なサポートで、年間100件以上の問題解決をおこなっています。

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目次

1.不倫・浮気の慰謝料の相場

 

不貞慰謝料の相場です。離婚する場合100万円~300万円、離婚しない場合数十万円~100万円です。

 

不倫、浮気の定義は人により異なります。
法律上、慰謝料請求をするには、不倫・浮気が「不貞行為」に当たることが必要です。
不貞行為は、「配偶者以外と性交や性交類似行為をおこなう」ことです。

 

夫婦には貞操義務があり、不貞行為により受けた精神的苦痛に対して慰謝料請求をおこないます。

不貞慰謝料の裁判上の相場は、50万円から300万円程度です。


明確な算定基準はなく、裁判上では個別のケースに応じて慰謝料の金額が決められています。
話し合いの段階でも、この相場を参考に請求をおこなうことが多いです。

裁判上の相場においても、不倫により離婚する場合100万円~300万円程度離婚しない場合は50万円~200万円程度とケースバイケースで分かれています。

そのうえで、不倫の発覚後も離婚をせず、不倫相手に慰謝料請求する場合には「50万円~200万円程度」の相場の範囲で、具体的な事情を踏まえながら150万円で請求したり、話し合いにより50万円で合意する場合もあります。


あくまで、相場は目安でしかありません。

 

さまざまな法律事務所のコラムで、慰謝料相場として挙げている金額の幅に多少の違いがあるのはこのためです。

不倫・浮気の慰謝料の相場
不倫(浮気)により離婚する場合 100万円~300万円 程度
離婚せず、別居しない場合

50万円~100万円 程度

離婚せず、別居する場合

100万円~200万円 程度

 

 

実現不可能な高額な慰謝料請求は、話し合いがまとまらず相手との交渉長引く可能性があります。

また、不倫相手に慰謝料支払いの能力がない場合には、分割支払い、保証人を求めるなど柔軟な対応を検討する必要があるかもしれません。

 

このように、個別の事情によって、相場に比べて慰謝料額は低くなることや、高くなることもあります

感情の対立があり話し合いが進まない場合、第三者を入れることで具体的に前に進む可能性があります。


弁護士もまた不倫問題における代理人となることができます。
当事者で直接交渉をしなくても良いため、精神的な負担はかなり軽減されます。


当事務所でも、不倫慰謝料請求のトラブルについて交渉段階からサポートしております。
初回相談無料で具体的なアドバイスをおこなっていますので、お気軽にお問合せください。

次に、どのような場合に、不倫による慰謝料を請求できるのか説明します。

2.不倫慰謝料を請求できる条件

 

不貞行為を原因とする慰謝料請求できる条件について解説しています。

 


不貞行為で逮捕されることはありませんが、法律に反する不法行為です。


不倫をした配偶者と不倫相手は、不法行為の加害者であり、精神的苦痛をうけた被害者である配偶者は、損害賠償として慰謝料の支払いを求めることができます。

具体的に、どのような条件がそろえば慰謝料請求ができるのかについて順を追って解説します。

2-1.不貞行為があること

 

夫婦間には、「貞操義務(ていそうぎむ)」があります。

 

民法770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1 配偶者に不貞な行為があったとき。

 

法律上、配偶者以外と肉体関係をもつことを「不貞行為(ふていこうい)」と言いますが、離婚できる理由のひとつとされています。

貞操義務を破った配偶者に対して、不法行為として損害賠償請求をすることができます

ただ、肉体関係(性交渉)があったことをもとに慰謝料請求をおこなう場合、その証拠を押さえなければ、慰謝料を請求することは難しいです。

なお、「肉体関係(性行為または性的類似行為)があること」は、慰謝料を請求するにあたり必ず必要とされているわけではありません。
性行為を伴わない行為であっても「婚姻共同生活を侵害・破壊に導く可能性のある行為」は加害行為として慰謝料を請求できる場合があります(たとえば同棲しているが、性行為及び性的類似行為がない場合)。


裁判例では「婚姻共同生活を侵害・破壊に導く可能性のある行為」として「抱擁」があります(東京地裁平成24年12月21日判決)

 

2-2.自由な意思にもとづくもの

 

性的な関係を強制や脅迫などによらず、自由意思にもとづいて性行為または性的類似行為がおこなわれたものであることが必要です。

 

2-3.故意・過失がなかった(既婚者だと認識できなかった)

 

配偶者の不倫相手が、既婚者と知っていて性的な関係を持ったこと(故意。意図的なこと、わざと)、または既婚者であることを知らなかったことに落ち度がある(過失)ことが必要です。

 

2-4.婚姻関係への悪影響があった

 

離婚をしなくても不倫されたことによる慰謝料請求は可能です。

ただ、不倫により平穏で円満な夫婦の婚姻生活が侵害された、婚姻関係が破綻したことが必要です。
精神的な苦痛を受けたことに対して慰謝料請求をするものであるため、不倫(原因)と精神的な苦痛(結果)の間に関係性があることが求められます。

なお、内縁(事実婚)関係も、過去の裁判例では婚姻関係に準じるものとされているため、パートナーにおいて貞操義務があると考えられます。そのため、不倫慰謝料の請求は可能です。

また、別居中であったとしても、不倫慰謝料請求が可能なケースがあります
離婚前提の別居ではあるが短期間である場合や単身赴任などの場合には、婚姻関係は破綻していないと考えられるため、慰謝料請求できる余地があります。

 

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3.不倫慰謝料請求が難しいケース

 

不貞行為による慰謝料請求が難しいケースについて解説しています。

 

不倫慰謝料請求のための条件を満たしても、請求が困難なケースがあります。

 

3-1.時効(不倫発覚から3年、不倫から20年)

 

不倫慰謝料請求には期限があります。
不倫(浮気)が発覚した時から3年、不倫関係があったとき(最後の性行為等)から20年を経過すると慰謝料は請求することができません。

時効期間のカウントをはじめる時点を「起算点(きさんてん)」といいます。
不倫を知った時、不倫関係が終った時が「起算点」となります。

「不倫慰謝料」は時効により請求できなくても、不貞行為に対する精神的苦痛を含む「離婚慰謝料」としての時効期間内(離婚から3年以内)であれば、離婚原因を作った配偶者に対して「離婚慰謝料」を請求できることがあります。


なお、たとえば不倫相手から不貞慰謝料請求の支払いを受けている場合、
離婚訴訟における離婚慰謝料の支払い請求に対しては、その額が調整される(減額される)可能性があります。

「離婚慰謝料」と「不貞慰謝料」の違いは次のとおりです。

 

「離婚慰謝料」と「不貞慰謝料」の違い
不貞慰謝料
  • 請求相手
    配偶者、不倫相手
  • 内容
    不倫(不貞行為)による精神的苦痛に対する慰謝料
  • 時効
    不倫を知った時から3年
    不倫関係が終った時(最後の性行為等)から20年

    不倫をした配偶者に対する不貞慰謝料請求権は、離婚から6か月を経過するまで時効は完成しません。離婚1か月後に不貞慰謝料が時効にかかる場合でも、事実上6か月後まで延びます(民法159条
離婚慰謝料
  • 請求相手
    配偶者のみ(
  • 内容
    不倫(不貞行為)、DV、モラルハラスメント、悪意の遺棄など
    離婚原因を作った配偶者が支払う慰謝料
  • 時効
    離婚から3年

    )離婚慰謝料を不倫相手に請求できないと裁判所が判断している例があります(2019219日最高裁第3小法廷)。

 

なお、離婚後に不貞行為が発覚した場合にも、時効にかかっていない場合には、慰謝料請求できる余地があります。

 

参考記事

 

3-2.ダブル不倫

 

不倫した配偶者の相手が既婚者である場合、不倫された配偶者は相手に慰謝料を請求することは可能です。


ただ、ダブル不倫である場合は「夫婦」としての家庭単位で考えると、「不倫された配偶者」がお互いに慰謝料を請求することになります。
こうした場合には、お互いの夫婦間で経済的な代償が発生するため、不倫慰謝料が難しいケースが発生します。

 

お互いに既婚者同士のダブル不倫において、慰謝料請求が難しい理由について解説しています。

もちろん、一方の損害が大きい場合には、不倫慰謝料を請求するメリットはあります。
また、不倫を原因として離婚する場合には、慰謝料を請求することに問題はありません。

 

なお「ダブル不倫」についての問題点について、次のコラムで解説しています。

 

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3-3.不倫相手の支払い能力がない

 

不倫(浮気)相手が、未成年や無職である場合には、事実上慰謝料の請求は難しいです。
ただ、慰謝料額は損害の程度で決めることが基本で、「どうやって支払わせるか」を考えることになります。

不倫による慰謝料請求は、原則は金銭による支払いです(金銭賠償)。


相手に支払い能力がない場合には、① 分割支払いにする、② 保証人をつけることも検討すると良いでしょう。
なお、交渉により合意した内容については、書面にしておきます。
できることなら、公証役場で公正証書を作成します。

公証役場とは、元裁判官や元検察官など法律の専門家がいる役場です。
法律の専門家が作成する契約書(公正証書)は、法律的に間違いなく、もし不払いとなったときには、裁判をしなくても強制執行(給料の差し押さえ)の手続をおこなうことが可能です。

 

なお、不倫誓約書(示談書)の書き方については、具体例や誓約書の例文・誓約書テンプレートの紹介を交えながら詳しい解説をおこなっています。

 

 

3-4.すでに慰謝料を受領している

 

不倫により離婚する場合で、すでに離婚慰謝料を受け取っている場合には、不倫慰謝料を請求し受領することはできません

不倫慰謝料、離婚慰謝料は一部内容がかぶるため、二重取りはできません。
すでに十分な慰謝料を受け取っている場合には請求が難しいです。

 

3-5.すでに婚姻関係が破綻していた

 

不倫(浮気)がおこなわれた時、すでに夫婦関係(婚姻関係)が破綻していた場合には不倫慰謝料を請求することはできません。

 

「婚姻関係が破綻している」ケース(裁判で婚姻関係が破綻していると判断された事例)

  • 長期間の別居(単身赴任、長期入院など正当な理由のないもの)
  • 配偶者によるDV、モラルハラスメントがある
  • 婚姻関係維持に向けた協力がない
     (正当な理由なく働かない、浪費・家計にお金を入れない、宗教活動に執心など)
  • 性格、性生活の不一致

 

なお、離婚調停中に不貞行為(不倫)があった場合、不倫慰謝料請求ができるかどうかは、「婚姻関係が破綻していたかどうか」で判断されます。

例えば、離婚自体は合意していて、財産分与や子どもの親権などを求めて調停をおこなっている場合には婚姻関係は破綻していると判断できます。

 

一方で、婚姻関係の修復や継続を望んで調停をおこなっている場合には、婚姻関係は継続していると考えられるケースもあるため、不倫慰謝料を請求できる余地もあると言えます。

 

4.不倫慰謝料額を決める要因

 

不貞慰謝料の請求額を左右する要因です。婚姻期間、夫婦関係の破綻、不貞行為の内容、被害者側の配偶者へ影響、子供への影響などです。

 

不倫(浮気)の慰謝料額に基準はありません。


ただ、不貞行為による慰謝料請求をもとめる裁判をおこした場合、次の家庭の事情や不倫の状況などさまざまな要素を考慮し、慰謝料の金額を判断し決定されることが多くあります。

裁判所を利用しない、当事者同士での話し合いにおいても、慰謝料額を判断するための参考になります。

 

 

不貞慰謝料額が増減するポイント
婚姻期間 長い婚姻期間(=結婚期間)であれば増額要素になり、3年以下の短い婚姻期間であれば慰謝料が減額される傾向があります。
婚姻関係の破綻 不貞行為による円満で良好であった夫婦関係が破綻(離婚、別居)した場合には、精神的苦痛が大きいと判断され、高額になる傾向にあります。
不貞行為の内容

不貞行為の「交際期間の長さ(年単位など長期間継続)」「内容(会っていた回数や頻度、関係解消約束後も会っていた、相手が既婚者だと知っていたなど)」「謝罪・反省の有無」「社会的制裁を受けているか(勤務先を退職、懲戒処分を受けるなど)」「不倫相手の妊娠の有無(妊娠発覚は増額する要素)」により慰謝料額が検討されます。


例えば、不貞相手との交際期間が3か月程度で終了している場合や複数回など不貞行為の頻度が少数である場合で、当事者から謝罪があり、勤め先で懲戒処分を受け退職するなど社会的にも制裁を受けている場合には低額となる傾向があります。

配偶者への影響 不倫された配偶者が、ショックでうつ病など疾患をわずらい診断書がある場合には高額になる傾向があります。
子供への影響 子供の有無や人数も慰謝料額に関係します。
子供の人数が多いと、婚姻関係が破綻したことで生活を同じくする子供への影響が大きいため、慰謝料額は高額になる傾向にあります。
不倫・浮気の悪質性 不倫関係解消の約束を破る」「不倫相手が『既婚者だと知らなかった』(不倫相手に故意・過失がなかった。例 夫が不倫相手に「未婚」と嘘をついていた。)」「配偶者の浮気・不倫をするようになった原因がある(過去に自身も浮気をしていた。減額の可能性がります)」「不倫誓約書の合意内容を破った」など、浮気の悪質性や落ち度(過失)があるかも考慮されることがあります。

 

 

このほか、不倫相手が真摯に謝罪していることや、職場不倫発覚後に懲戒処分を受け退職しているなどの社会的制裁を受けている場合には慰謝料が減額されることがあったり、不倫相手の社会的地位が高く資力がある場合には慰謝料が高くなることがあります。

5.慰謝料請求に不倫の証拠は必要か

 

不貞慰謝料請求の根拠となる証拠の説明です。メール、SNSのダイレクトメッセージ、写真、領収書、探偵・興信所の報告書などです。

 

不倫の証拠がなくても、話し合いの段階で、不倫の証拠がなくても配偶者や浮気相手が不倫を認めている場合には慰謝料を請求できる余地が生まれます(請求可能)

しかし、配偶者や浮気相手が「不倫(性的な関係)」を認めない場合には、法的に有効な証拠を確保することが解決のための非常に大切なポイントになります。
裁判で貞操義務を破ったことの損害賠償として不倫慰謝料を請求するためには、不倫された側が証明しなければなりません。

性的な関係があったことを証明するための証拠としては次のようなものがあります。

 

不貞行為の証拠例
メール・SNS(LINE、Facebook、Instagramなど)

性的な関係があることがわかる内容。性交渉の画像、メッセージなどのやりとり。

写真・画像・音声 ラブホテルや不倫相手自宅等の出入り、性交渉の画像、動画。
また不倫を自白した際の音声など。
領収書など ホテル等の会員証、領収書など。
探偵・興信所による報告書 興信所などによる不倫相手とのホテルの出入りや、性交渉の場面をおさえた画像記録など。
示談書・念書など 不倫を認めた際に配偶者や不倫相手に書かせた念書、誓約書など。
利用履歴 交通系ICカードやカーナビの利用履歴

 

なお、違法に集めた証拠は、裁判手続では証拠として認められない場合があります。


不正に手に入れたパスワードなどを使って、ロックがかかった携帯電話・スマートフォン、パソコンなどにアクセスして証拠を手に入れた場合、刑事事件の対象となり罰せられる可能性があるため注意が必要です。

証拠収集で違法性を問われた際の関係法令
[刑事] 不正アクセス禁止法 3年以下の懲役または100万円以下の罰金(不正アクセス禁止法 第11条、第3条)
[民事] 損害賠償請求 プライバシー権の違法な侵害に対する損害賠償請求(民法709条)

 

なお、不倫・浮気の証拠について、くわしくは次の記事でも解説しています。

 

参考記事

 

6.不倫慰謝料は誰に請求できるか

 

不貞行為による慰謝料請求の相手方の説明です。不倫相手と、不倫をした配偶者です。

 

不倫慰謝料は、不倫した配偶者とその不倫相手に請求できます。


双方に請求できますし、一方にだけ請求することも可能です。
不倫した配偶者と相手が連帯して賠償金の支払い義務を負っています。

請求の際の注意点として、双方に請求をして、一方が不倫慰謝料を全額支払った場合、もう一方に請求することはできません(不倫慰謝料の二重取りはできません)。

 

 

なお、不倫慰謝料を支払った不倫をした配偶者や不倫相手は、請求を受けていた他方に対して負担割合に応じて支払いを求めることができます。

 

これを法律上「求償権(きゅうしょうけん)」と言います。

一般的に、不倫をした配偶者と不倫相手は、慰謝料に対してそれぞれ2分の1程度の分担することが多いです。

具体例として、被害者配偶者から200万円の請求があり、不倫相手がその全額を支払った場合、不倫をした配偶者に対して分担額2分の1である100万円を求償することが考えられます。

もし、離婚せずに不倫相手にのみ慰謝料を請求する場合には、配偶者に対する求償権を放棄させることを約束させる必要があります。

求償権を放棄させておかないと、不倫相手から不倫をした配偶者に対して求償権にもとづく支払いを求められてしまい、家計からお金が出ていくことになります。


そのため、不倫相手にのみ慰謝料を請求する場合には、あらかじめ2分の1相当額で請求し、求償権を放棄する合意内容で、示談書を取り交わすこともひとつの解決方法です。

7.慰謝料の請求方法と流れ

 

不貞慰謝料請求の流れです。

 

実施に、不倫慰謝料を請求するための方法や、請求にかかる費用について説明します。

 

7-1.内容証明郵便による慰謝料請求

 

不倫慰謝料について、請求期限があることは先ほど説明しました。
この請求期限は先延ばし(時効の完成猶予)や、時効のカウントをリセット(時効の更新)することが可能です。

内容証明郵便による不倫慰謝料の請求は、時効の完成を6か月間先延ばしにする法律的な効果があります。

法律上、相手に一定の行為を要求することを「催告(さいこく)」と呼んでいます。
この催告は、時効の完成猶予の効果がありますが、催告したことを客観的に証拠として残すために、いつ、誰に催告をしたか分かるように内容証明郵便を送付します。

弁護士が不倫慰謝料を請求する内容証明郵便を作成、送付する際には、次のような点を基本的には記載します。

 

不貞慰謝料請求の内容証明郵便の記載事項
不倫(不法行為)があったこと 「いつ頃から不貞行為があったのか(継続しているのか)」「不貞行為の具体的な内容」
精神的苦痛があったこと 不貞行為が原因で「円満な婚姻関係の破綻」「うつ病の発症」など精神的苦痛があったこと
不法行為にあたること 不貞行為による損害賠償責任を求めること
要求 「不倫関係を終わらせること」「具体的な慰謝料額や支払期限と支払先口座」

 

当事務所でも、不倫慰謝料請求に関しての内容証明郵便の作成、送付もサポートしています。
弁護士名の記載のある内容証明郵便であれば、あなたが本気であることが伝わり、プレッシャーをかけることもできます。

内容証明郵便は数千円程度で、送付することができます。

7-2.話し合い

 

任意での話し合いをおこなう際のポイントは次の通りです。

 

  1. 不倫関係の清算(不倫関係を終わらせる)
  2. 不倫慰謝料(金額、支払方法、期限)
  3. 合意を破った際の罰則(慰謝料不払い時の約束)

 

話し合いではなかなか解決しない場合があります。

 

  • 不倫相手の住居所、連絡先が不明
  • 話し合い/条件提示に応じない
  • 不倫した配偶者によるモラハラ/DVがあり、精神的につらい場合

 

こうした場合には、第三者を入れると話が進む場合があります。
弁護士を代理人として立てることが一般的です。


これは、不倫慰謝料の裁判例などを熟知しており、代理交渉から契約書の締結までの適切な解決を依頼できるというメリットがあるためです。

残念ながら、相手と書面や電話のみで交渉をおこない、満足できる内容で解決にいたることは少ないと思います。

 

弁護士を通して連絡することで、相手も要求を無視したり拒否をすることが難しくなります。
話合いによる解決は、裁判所に訴えるよりも柔軟な対応ができるため早期解決が期待できます。

 

7-3.裁判所の手続(調停、裁判)

 

話し合いがまとまらない場合には、最終的に「調停手続」や「裁判(訴訟)」による解決を検討します。

なお、内容証明郵便送付による時効の猶予は、相手に届いてから6か月です。
不倫慰謝料の時効がせまっている場合には、交渉が進まないことを考えて、次の解決手段である裁判所利用の準備も同時に進めていきましょう。

交渉が進まない、裁判所利用に不安がある場合には、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
どのような手続か、利用を検討した方が良いのかなど、当事務所でも具体的にアドバイスしています。初回相談無料ですのでお気軽に早めにご相談ください。

 

7-3-1.調停手続

 

調停手続は、調停委員を交えた裁判所での話し合いです。
裁判に比べて安価な費用で利用することができます。
ただ、調停手続は、相手が裁判所に出廷しない、あるいは、不倫慰謝料の支払いの条件に応じない場合には「調停不成立」となり、手続は終了します。

なお、離婚調停のなかで配偶者に対して不倫慰謝料請求をおこなうことも可能です。

 

7-3-2.裁判

 

離婚をしない場合、不倫相手に対する不倫慰謝料を請求する場面では、裁判を利用することも多いです。

調停手続は相手が応じなければ手続は終了します。
話し合いの段階で交渉が決裂している場合は、調停ではなく訴訟提起をおこない、裁判所の判断(判決)による具体的な解決を求めるのが良いでしょう。

具体的に訴訟は「不法行為にもとづく損害賠償請求」として、裁判を起こします。

裁判では、権利を主張する側に立証責任(りっしょうせきにん)、つまり「不倫があったこと、精神的な苦痛を受けたこと」を証明するのは、不倫をされた配偶者側にあります。
そのため、証拠集めが重要な解決ポイントです。

なお、裁判は「判決」のイメージがあるかもしれませんが、裁判の途中で裁判所から和解を勧められる場合があります。

これを「訴訟上の和解」と言います。


過去の裁判所の統計では、地方裁判所では半数近くが和解により終了しています。


被害者側の配偶者において不倫の証拠が不十分な場合には、判決を求めていくよりも、双方の主張をくんだ和解案の提示に応じる方が、負ける(敗訴)リスクを減らし、適切な慰謝料を受けられる可能性があります。

以上が、不倫慰謝料請求のための手順となります。

 

参考記事

  • 不倫慰謝料請求の裁判手続きと5つの注意点
    不倫・浮気による不貞慰謝料請求のトラブルが「裁判」に発展するケースがあります。裁判になった際の「不倫された側」「不倫した側」双方のデメリットやリスクを中心に弁護士が解説しています。

 

8.不倫慰謝料請求のリスク

 

不貞慰謝料請求をするにあたってのリスクについて説明しています。

 

不倫をされた側、不倫をした側の双方にとって、慰謝料請求についてリスクはあります。
特にどういったリスクがあるのかについて、それぞれの立場から解説します。

 

8-1.職場不倫で勤務先から処分を受ける(弁護士が窓口になり対応)

 

不倫をした側のリスクです。

不倫された側の配偶者が、不倫相手の連絡先を職場しか知らない場合、押しかけられることで職場にも不倫の事実を知られることになります。
企業がコンプライアンスなどを重視する昨今では、職場不倫に厳しい処分を課すケースも見られます。
不倫された配偶者に押しかけられるリスクが高い場合、弁護士が代理人として立ち、配偶者との交渉をおこなうことで、相手の行き過ぎた行動を抑えることができる場合があります。

なお、職場不倫のケースにおいて、不倫された配偶者が職場である会社へ訪問する行為は、離婚しない場合には自分の配偶者の社内評価を下げる可能性があるため、よく考えて行動する必要があります。

 

8-2.話し合いに応じない

 

当事者で直接話をする場合、適切な解決はどのあたりかが判断できず、また感情的になってしまい話し合いが進まないことがあります。
お互いに精神的な負担が続くため、疲れはててしまっていることが多くみられます。

不倫をされた配偶者として、第三者である弁護士を間に入れることで解決に近づく場合があります。


弁護士が代理人として間に立つことで、相手に本気度を見せることができ、具体的にかつ適切に交渉を進められる可能性があります。

 

一方で、不倫をした配偶者や、その浮気相手が弁護士に依頼した場合には、配偶者から理不尽で不当な請求を防ぎ、交渉窓口の対応、合意書のチェックを依頼できるため、トラブルの拡大、再発をおさえることが期待できます。

 

9.不倫が原因で離婚する場合に決めておくこと

 

不倫が原因で離婚する場合に、被害者側の配偶者が決めておくと良いことについて解説しています。

 

不倫が原因で離婚する場合、離婚調停と合わせて慰謝料を請求することが可能です。


また、お子さまがいらっしゃる場合には親権、養育費(生活被、教育費、医療費など)、面会交流といった権利や条件。

そして、婚姻期間中に夫婦で築いた資産の「財産分与」や年金分割などについても、決める必要があります。

離婚調停の場合、相手方と離婚や離婚条件で合意できた場合、裁判所はその内容を記載した「調書」と呼ばれる書面を作成します。

 

話合いで離婚する場合には、相手方と取り決めた離婚条件について「離婚協議書」を作成しておくと良いでしょう。

後日、「そのような約束はしていない」といったトラブルを防ぐために有効です。

もしあなたが金銭の支払いを受ける権利者側の配偶者である場合、離婚協議書を公証役場で「離婚公正証書」の形で書面にしておくと良いでしょう。

公証人はもともと裁判官、弁護士、検察官などの法律の専門家であることが多く、法的に有効な書面を作成することが可能です。

詳しくは次のコラムで解説しています。

 

 

9-1.別居の際の婚姻費用

 

離婚前に別居する場合には、その別居期間の生活費やお子さまの養育費として「婚姻費用」の支払いを求めることができます。

婚姻費用は収入の多い配偶者が、他方の配偶者に支払います。

婚姻費用の請求は調停手続でも求めることができます。
しかし、不倫をした配偶者(有責配偶者:ゆうせきはいぐうしゃ)が婚姻費用を求めることは難しいです。

ただ、配偶者の生活費は認められなくとも、お子さまの生活費分のみ婚姻費用としての請求が認められる可能性があります。

 

9-2.離婚の際の親権、養育費、面会交流

 

お子さまの親権について、有責配偶者であっても獲得できる場合があります。
親権は、お子さまの養育環境はどちらの親の元で過ごすのが良いか、を重視するためです。

不貞行為をおこなったこととは別問題です。

 

養育費についても、子供にとっての権利であり、有責配偶者がお子さまと一緒に生活をする親(監護親:かんごしん)となった場合でも、他方の配偶者に対して支払いを求めることはできます。

 

不倫をした配偶者が親権を獲得すること、養育費を請求することについて次の記事でくわしく解説しています。



面会交流も、お子さまにとっての権利です。
そのため、面会交流に関する内容(実施時期、場所、条件など)を具体的に考えておくことも大切です。

このように離婚原因となる不倫をした有責配偶者であっても、お子さまに関する権利を獲得することはできます。

 

10.不貞慰謝料の対応を弁護士に依頼した場合の費用相場

 

不貞慰謝料請求事件を弁護士に依頼した場合の費用の相場について解説しています。

 

不貞慰謝料の交渉・対応を弁護士に依頼した場合、費用の相場はいくらでしょうか。

実は、以前は日本弁護士連合会による弁護士報酬の統一基準(以下「日弁連基準」)がありました。
日弁連基準は廃止されましたが、多くの事務所はその報酬基準をふまえて弁護士費用を設定している事務所が多く、その金額が費用の相場と言えそうです。

また、不倫慰謝料の弁護士費用は「相談料」「着手金」「報酬金」「日当」「実費」などの項目から成り立っています。

 

10-1.相談料

 

相談料は、弁護士との相談費用です。
依頼前の初回相談料、依頼後の打合せ費用は無料としている事務所が多いです。

日弁連基準の相談料は次の通りでした。

 

参考・引用 │ (旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準「法律相談等」

法律相談等
報酬の種類 弁護士報酬の額
初回市民法律相談料 30 分ごとに
5000 円から1 万円の範囲内の一定額
一般法律相談料 30 分ごとに
5000 円から2 万5000 円以下
(専門 の場合)

 

10-2.着手金(ちゃくしゅきん)

 

弁護士に依頼した時点でかかる費用です。
原則、依頼内容に弁護士が着手した時点で、返金はされないものです。

日弁連基準における着手金は、慰謝料の請求額など経済的利益から計算しています。
ただ、不貞慰謝料の着手金は数十万円~50万円程度で設定されていることが多いようです。

 

 

参考・引用 │ (旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準「法律相談等」

民事事件 1.訴訟事件(手形・小切手訴訟事件を除く)・非訟事件・家事審判事件・行政事件・仲裁事件
報酬の種類 弁護士報酬の額
着手金 事件の経済的利益の額が300 万円以下の場合 8%
300 万円を超え3000 万円以下の場合 5%+9 万円
3000 万円を超え3 億円以下の場合 3%+69 万円
3 億円を超える場合 2%+369 万円
※着手金の最低額は10 万円

 

民事事件 2.調停事件及び示談交渉事件
報酬の種類 弁護士報酬の額
着手金
報酬金
1に準ずる。ただし,それぞれの額を3 分の2 に減額することができる。
※示談交渉から調停,示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は,1の2 分の1
※着手金の最低額は10 万円

 

10-3.報酬金

 

事件の成功度合いに応じて、事件終了後に支払うものです。
多くの事務所では、着手金と同額程度で報酬金を設定しています。

 

参考・引用 │ (旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準「法律相談等」

民事事件 1.訴訟事件(手形・小切手訴訟事件を除く)・非訟事件・家事審判事件・行政事件・仲裁事件
報酬の種類 弁護士報酬の額
報酬金 事件の経済的利益の額が300 万円以下の場合 16%
300 万円を超え3000 万円以下の場合 10%+18 万円
3000 万円を超え3 億円以下の場合 6%+138 万円
3 億円を超える場合 4%+738 万円

 

民事事件 2.調停事件及び示談交渉事件
報酬の種類 弁護士報酬の額
着手金
報酬金
1に準ずる。ただし,それぞれの額を3 分の2 に減額することができる。
※示談交渉から調停,示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は,1の2 分の1
※着手金の最低額は10 万円

 

10-4.日当

 

遠方の裁判所などへ出向く際の費用となります。
拘束される時間によって金額が変わります。

 

参考・引用 │ (旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準「法律相談等」

その他 2.日当
区分 弁護士報酬の額
半日 3 万円以上5 万円以下
一日 5 万円以上10 万円以下

 

10-5.実費

 

内容証明郵便の郵送料や、裁判所手続を利用される際に必要となる収入印紙や郵便切手など、依頼内容を進めるためにかかった費用です。

 

10-6.弁護士費用についての注意点

 

不倫慰謝料の弁護士費用を比較される場合、その活動内容も確認しておくと良いかもしれません。

依頼した時点でかかる着手金は、弁護士の活動費用です。
しかし、その着手金額の高い、安いだけで決めてしまうと後悔する可能性があります。

法律事務所によって、着手金のなかに「3回までの裁判所への出廷費用」など上限を設けている場合もあります。
法律事務所の弁護士費用を比較する際は、どこまで何をサポートしてもらうことができるのかも確認されると良いでしょう。

 

11.まとめ

 

 

不倫・浮気問題解決のゴールは「慰謝料」の支払いにあります。
その他、不貞関係の清算や謝罪、離婚にともなう諸条件の取り決めも関係してくることがあります。

弁護士相談のメリットは、その金額の決め方や、支払い方法、交渉の進め方や対応についての具体的なアドバイスを受けることができることです。

また、弁護士依頼することで、相手方との代理交渉合意書の作成など、専門知識にもとづいたトータルサポートが受けられるため、精神的・事務的な負担はかなり軽減されます。

 

なによりも相手と直接向き合い、大きく傷つくこともありません
いつでも相談できるため、ひとりで悩み、不安を抱えることもありません。

ぜひ、後悔のない解決のために離婚・男女問題は古山綜合法律事務所までご相談ください。

 

経験豊富な弁護士が、あなたのお気持ちやご事情を踏まえた適切なアドバイスをいたします。

不倫問題、離婚問題について、無料相談のご予約を受付中です。
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