自己破産と離婚、子供の将来は?養育費と財産分与への影響


借金問題

執筆者 弁護士 古山 隼也 (こやま しゅんや)


  • 大阪弁護士会所属 登録番号 第47601号

略歴

清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁(平成18年まで勤務)/京都大学法科大学院卒業/古山綜合法律事務所 代表弁護士

講演・メディア出演・著書

朝日放送「キャスト」/弁護士の顔が見える中小企業法律相談ガイド(弁護士協同組合・共著)/滝川中学校 講演「インターネットトラブルにあわないために-トラブル事例を通じて-」


大阪市職員、大阪・京都の法律事務所の勤務経験を活かし、法律サービスの提供を受ける側に立った分かりやすい言葉で説明、丁寧なサポートで、年間100件以上の問題解決をおこなっています。

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この記事の目次(クリックで開閉)

1.自己破産と離婚、子供の将来は?養育費と財産分与への影響


「自己破産しても、親権は取れますか?」

「養育費はどうなりますか?」

離婚と自己破産、2つの大きな問題に直面した親御さんが最も不安に感じるこの疑問に対し、結論からお伝えします。

・親権
 自己破産を理由に親権が取れなくなることはありません。

・養育費
 自己破産しても支払い義務は消えず、受け取る権利も守られます。

・子供の財産
 お子様固有の預金等は原則として守られます。


この記事では、子供の生活を守るための法的なルールと、離婚・自己破産の手続きを「どちらから先に進めるべきか」という判断基準について、実務的な視点から解説します。

2.自己破産と離婚、子供のためにまず知っておきたいこと

2-1.親権者になれる?自己破産と親権の関係

 

自己破産という経済的な理由だけで親権が取れなくなることは、法的にはありません。

親権者を決定する際、裁判所は「子の福祉(子供の幸せ)」を最優先に考えます。
具体的には以下の要素が重視されます。

  • これまでの監護実績(どちらが主にお世話をしてきたか)
  • お子さんへの愛情と意思
  • 離婚後の監護体制(サポート体制)
  • お子さんの年齢や意思


借金を放置するよりも、自己破産によって生活再建の目処が立っていることは、むしろ「養育環境が整った」としてプラスに評価される可能性があります。

2-2.養育費の支払いはどうなる?免除されない「非免責債権」


自己破産をしても、養育費の支払い義務は消滅しません。
法律で養育費は「非免責債権(ひめんせきさいけん)」と定められています(破産法第253条)。

これは、破産手続きによって借金の支払いが免除(免責許可決定)されたとしても、支払い義務が残り続ける特別な債権のことです。

支払う側の場合
自己破産で借金がなくなっても、養育費は払い続けなければなりません。
むしろ、借金返済の負担がなくなることで、養育費を払いやすくなると言えます。
受け取る側の場合
相手が自己破産しても、養育費を請求する権利は消滅しません。
過去の未払い分(滞納分)も含めて請求が可能です。


養育費は、お子さんの生存に関わる基本的な権利を守るためのものです。


自己破産がお子さんの養育費に与える影響については、この点を正確に理解しておくことが非常に大切です。

2-3.生活環境の変化|家や車、学費への影響


自己破産をすると、債務を整理する代わりに、一定以上の価値のある財産は処分され、債権者への配当に充てられることになります(管財事件となる場合)。


これがお子さんの生活環境にどのような変化をもたらす可能性があるのか、具体的に見ていきましょう。

1.住まい(不動産)
自己破産者ご本人名義の持ち家は、原則として破産管財人によって売却・処分されることになります。
または、破産前に住宅ローン債権者である金融機関と協議の上で、任意売却による処分を行うこともあります。
賃貸住宅などへの引越しが必要となり、場合によっては転校を伴うこともあります。
ただし、賃貸住宅にお住まいの場合は、家賃滞納がない限り退去を求められることはありません。
2.車
ローンが残っている車や、査定価値が20万円を超える車は処分の対象となるのが一般的です。
公共交通機関の利用など、お子さんの通学方法に変化が出る可能性があります。
3.学費・習い事
私立学校の学費の支出上限が設けられるなど、直接制限されることはありません。
家計の見直し、賃料の安い物件や持ち家の処分のため引っ越しすることで、通学・通塾などの継続が難しくなるケースはあります。
なお、所得に大きな変化がある場合には、自治体の修学支援や返済義務のない給付型奨学金を受けることを検討します。
4.クレジットカード・銀行口座
親御さん名義のカードや家族カードは利用停止(強制解約)となります。ネットでの買い物や修学旅行代金の振込方法など、現金やデビットカードでの対応が必要になります。
学費の引き落とし口座と同じ銀行でカードローンなどの借入れがある場合、自己破産の手続きに伴い口座が凍結されます。
事前に別の銀行口座へ引き落としを変更するか、振込用紙など代わりの支払い方法を確認しておきましょう。

これらの変化について事前に理解し、お子さんとの生活再建を具体的にイメージしておくことが重要です。

2-4.子供名義の預金や学資保険は守れる?

 

お子さんの将来のために準備してきた預金や学資保険が、ご自身の自己破産によってどう扱われるのかは、多くの親御さんが抱える切実な疑問かと思います。

お子さん固有の財産
お年玉やお小遣いなど、お子さん自身が管理・使用しているお金は守られます。
名義預金
口座の名義は子供でも、原資を親が出し、通帳や印鑑も親が管理している場合は「実質的に親の財産」とみなされ、処分の対象となるリスクが高いです。
学資保険
契約者が親である場合、解約返戻金は親の資産(破産財団に組み入れられる財産)とみなされます。
解約返戻金の見込額が20万円を超える場合は、解約して債権者に分配するか、相当額を積み立てて支払う必要があります。

特に「子供名義にしておけばバレないだろう」という安易な自己判断は、財産隠し(隠匿)と疑われる危険を伴います。

財産隠しと判断されると、借金の免除(免責許可決定)を受けることができなくなる可能性が極めて高くなります。

お子さんの財産を正当に守るためには、必ず弁護士などの専門家に相談し、正直に申告した上で「自由財産(手元に残せる財産)」として手元に残すことができるかを検討します。

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3.離婚と自己破産、どっちが先?タイミング別のメリット・デメリット

 

離婚と自己破産は、どちらの手続きを先に進めるべきか、という点において多くの当事者が直面する最大の悩みの一つです。

この選択は、ご自身やご家族が守れる財産の範囲や、その後の手続きの複雑さ(同時廃止になるか管財事件になるか)に影響を与えることもあるため、非常に慎重な判断が求められます。

3-1.【ケース1】自己破産した後に離婚する場合

 

まず自己破産の手続きを裁判所に申し立てて、免責許可決定を得てから離婚手続きを進めるというパターンです。


借金問題を法的に解決し、経済的な基盤をクリアにしてから、夫婦という身分関係の整理(離婚手続き)に入るアプローチです。

3-1-1.メリット:手続きが比較的シンプルになる可能性がある

 

自己破産を先行させることの最大のメリットは、手続きが比較的シンプルに進む可能性がある点です。

離婚に伴う財産分与を行う前に破産することで、手持ちの資産がない状態であることが明確になり、費用が安く期間も短い「同時廃止」で手続きできる可能性が高まります。

また、借金の重圧から解放された状態で離婚協議に臨めるため、養育費や親権の話し合いを冷静に進めやすいという精神的な利点もあります。

3-1-2.デメリット:夫婦の共有財産が処分の対象になる

 

自己破産を先行させる場合、離婚前であるため、法律上は夫婦の財産が「共有財産」としての側面を持ちます。

特に注意が必要なのは、ご自宅(不動産)や家財です。

破産者本人名義の財産は処分の対象となりますし、同居中の家財道具などが「どちらの所有か不明」として調査対象になることもあります。

これにより、配偶者の生活環境にまで影響が及び、離婚協議が感情的にこじれるリスクがあることを理解しておく必要があります。

3-2.【ケース2】離婚した後に自己破産する場合

 

次に、まず離婚を成立させ、財産分与や慰謝料、養育費などの条件を確定させた後に、自己破産の手続きを進めるというパターンです。

元配偶者への影響を最小限に抑えたいと考える場合に選ばれることが多いです。

3-2-1.メリット:元配偶者の財産を守れる

 

離婚を先行させることの最大のメリットは、元配偶者を自己破産の手続きから切り離せる点です。

適切な範囲で財産分与を行うことで、婚姻期間中の共有財産を確保することができます。

また、離婚によって生計が別になれば、自己破産申立ての際に元配偶者の給与明細や通帳の提出が不要になり、相手のプライバシーや心理的負担を守れます。

なお、元配偶者が連帯保証人でない限り、相手の信用情報(ブラックリスト)に傷がつくこともありません。

3-2-2.デメリット:財産隠しを疑われ、手続きが複雑化するリスク

 

離婚を先行させる場合の最も重大なリスクは、離婚に伴う財産分与や慰謝料が「詐害行為(さがいこうい)」とみなされる危険性です。

「妻(夫)に財産を渡して守りたい」と考え、相場(通常は2分の1)を超える過大な財産分与を行ったり、支払い不能な状態で慰謝料を支払ったりすると、破産管財人によってその行為が否認(取り消し)され、元配偶者が財産の返還を求められる可能性があります。

さらに、このような疑いが生じると、本来なら簡易な「同時廃止」で済むはずが、調査のための「管財事件」となり、予納金(最低20万円程度〜)という追加費用が発生するデメリットもあります。

3-3.結論:あなたの状況に合わせた最適なタイミングの選び方

 

これまでに解説した2つのケースの判断基準をまとめます。

自己破産先行が向いているケース
夫婦共有の財産がほとんどなく、手続き費用を抑えて早期に借金を解決したい場合。
離婚先行が向いているケース
配偶者に借金の詳細を知られたくない、あるいは相手の資産やプライバシーを確実に守りたい場合(ただし、適正な財産分与額を守る必要あり)。

これらの判断は極めて専門的であり、ご自身だけで判断することは大きなリスクを伴います。

必ず弁護士に相談し、ご自身の個別の事情に合わせた最善の選択をすることが重要です。

4.自己破産で「財産分与」と「慰謝料」はどう変わる?

 

離婚の際に金銭的な取り決めの中心となる「財産分与」と「慰謝料」。

自己破産によってこれらの権利や義務がすべて消えてしまうのか、詳しく見ていきましょう。

4-1.財産分与への影響|もらえる財産が減る?

 

自己破産をする側(債務者)が財産分与を行う場合、その原資となる財産(持ち家、車、預貯金など)は原則として債権者への配当のために処分されてしまいます。

そのため、分与されるべき財産が大幅に減少する、あるいはゼロになってしまう可能性が高いです。

逆に、ご自身が財産分与を受け取る側で自己破産する場合は、離婚にあたり受け取った財産もご自身の資産として扱われるため、一定額(現金99万円など)を超える分は処分の対象となります。

4-2.不相当な財産分与は取り消される可能性も

 

前述の通り、破産手続きの直前に行われる不相当に高額な財産分与は、債権者を害する行為として問題視されます。

裁判所から選任された破産管財人は「否認権」を行使し、適正な額(清算的財産分与として認められる範囲)を超える部分について、元配偶者から取り戻すことができます。

安易な財産移動は、かえって元配偶者を巻き込む大きなトラブルに発展するため、専門家である弁護士のアドバイスが必須です。

4-3.慰謝料への影響|原則免除されるが例外あり

 

自己破産手続きにおいて、慰謝料(離婚慰謝料)の支払義務は原則として免責(支払い免除)の対象となります。

借金と同じく「支払わなくて良い」ことになってしまうのです。

しかし、この原則には非常に重要な例外が存在します。

4-3-1.DVや不貞行為による慰謝料は免責されないケース

 

以下の慰謝料は「非免責債権」として、自己破産しても支払義務が残ると定めています破産法第253)。

  1. 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  2. 故意または重過失により人の生命・身体を害した不法行為に基づく損害賠償請求権


具体的には、配偶者へのDV(暴力)による怪我の慰謝料などは「生命・身体を害した」ものとして免責されない可能性が高いです。

一方で、不貞行為(不倫)や性格の不一致による慰謝料は、相手を積極的に害する意図(害意)までは認められないとして、免責されてしまう(支払われなくなる)ケースも少なくありません。

「どのような理由の慰謝料か」によって結論が大きく異なるため、慰謝料請求を考えている場合は注意が必要です。

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5.要注意!配偶者の自己破産で影響を受けるケース


ご自身に借金がなく、「自分には関係ない」と考えている場合でも、配偶者の方が自己破産することで、思わぬ形で金銭的な影響を受けてしまうケースがあります。
特に注意が必要な3つの典型的なパターンを解説します。

5-1.あなたが「連帯保証人」になっている場合


配偶者の借金の「連帯保証人」になっている場合のリスクは深刻です。

主債務者である配偶者が自己破産によって支払い義務を免れると、債権者は連帯保証人であるあなたに対して残債務の一括請求を行います。
連帯保証人の責任は、離婚をしても消えません。

例えば、配偶者の事業資金や住宅ローンの保証人になっている場合、配偶者の破産と同時にあなた自身も多額の借金を背負うことになります。
結果として、共倒れを防ぐためにあなた自身も債務整理(任意整理や個人再生、自己破産)を検討せざるを得ない状況になることがあります。

5-2.住宅ローン(ペアローンなど)の契約がある場合


夫婦で住宅ローンを組んでいる場合(ペアローンや連帯債務)も注意が必要です。

配偶者が自己破産をすると、銀行との契約上「期限の利益」を喪失し、残りのローン全額を一括返済するよう求められます。

また、自己破産した配偶者は信用情報機関に事故情報が登録(ブラックリスト入り)されるため、住宅ローンの借り換え(単独名義への変更)の審査に通ることが極めて困難になります。

多くのケースでは、自宅を売却(任意売却)して精算するか、住み続けるためにあなた自身がどう対応するかの判断が求められます。

5-3.生活費のための借金「日常家事債務」の支払い義務


多くの人が見落としがちですが、「日常家事債務」も重要です(民法第761条)。

これは、食費、光熱費、家賃、お子様の医療費や教育費など、夫婦が共同生活を営む上で通常必要となる費用に関する債務のことです。
法律上、夫婦はこれらの債務について連帯して責任を負うとされています。

配偶者が「生活費のため」に使ったクレジットカードの借金などは、名義が配偶者であっても、あなたに請求が来る可能性があります。
ただし、ギャンブルや浪費による個人的な借金はこれに含まれません。

6.自己破産と離婚に関するよくある質問

Q. 自己破産を理由に離婚できますか?


A. 配偶者が一方的に「お前は自己破産したから離婚だ」と主張しても、裁判で認められることはありません。

日本の法律で定められている「法定離婚事由」に、自己破産そのものは含まれていません。

ただし、借金の原因がギャンブルや過度な浪費であり、それによって夫婦関係が修復不可能なほど破綻している場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性はあります。

Q. 離婚協議中の生活費(婚姻費用)はもらえますか?


A. はい、請求できます。

別居中であっても、離婚成立までは収入の多い側が少ない側の生活費を分担する「婚姻費用」の支払い義務があります。
相手が自己破産手続き中であっても、婚姻費用は養育費と同様に「非免責債権」ですので、支払い義務は免除されません。

ただし、相手の支払い能力が著しく低下している場合は、金額の減額交渉が必要になることもあります。

Q. 破産する相手方が財産を隠しているかもしれません。どうすればいいですか?


A. 弁護士にご相談ください。調査手段があります。

配偶者による財産隠しが疑われる場合、弁護士に依頼すると「弁護士会照会(23条照会)」という制度を利用して、銀行口座の取引履歴や保険の解約返戻金などを調査できる場合があります。

また、相手が自己破産をする場合、裁判所から選任された破産管財人が財産状況を徹底的に調査します。

但し、財産が本当に無い場合、調査が無駄に終わり費用倒れになる可能性があるので注意が必要です。

なお、破産する側の財産隠し(隠匿)は免責不許可事由となる重大な行為です。
管財人の調査によって隠し財産が発覚することも多いです。

Q. 弁護士費用が払えなくても相談できますか?


A. はい、相談可能です。諦めないでください。

多くの弁護士事務所では「初回無料相談」を実施しています。
まずは費用を気にせず、見通しを聞くだけでも大きな一歩です。

また、手持ちのお金がない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の「民事法律扶助制度」を利用できる可能性があります。
これを利用すれば、弁護士費用の立替え(月々5,000円〜10,000円程度の分割払い)を受けることができます。

費用を理由に問題を放置すると、かえって状況が悪化します。まずは無料相談や法テラスを積極的に活用してください。

※当事務所では、法テラス利用による自己破産手続きには対応しておりませんが、柔軟な「分割払い」をご用意しております。
法テラスの審査を待つことなく、スピーディーに手続きを開始できるメリットがあります。「月々の支払いを無理のない範囲に抑えたい」というご相談にも応じますので、お気軽にお問い合わせください。

7.まとめ:子供との新しい生活のために、一人で悩まず専門家へ相談しよう


離婚と自己破産という二つの大きな問題に直面したとき、「親としての責任」や「世間体」への不安から、一人で抱え込んでしまう方が多くいらっしゃいます。

法的に正しい手順を踏めば、「借金のない状態で、お子様と安心して暮らせる生活」を取り戻すことは十分に可能です。

しかし、ご自身だけで判断し、誤ったタイミングで離婚や財産分与をしてしまうと、「財産隠し」とみなされ、解決が遠のくリスクがあります。

古山綜合法律事務所では、借金問題に関する初回相談を無料でおこなっています。
「破産と離婚、どちらを先に進めるべきか」を確認するだけでも、状況は大きく前進します。
費用の分割払いにも対応しておりますので、お一人で悩まず、まずはお気軽にお問い合わせください。


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