自己破産すると家族はどうなる?家族への影響を徹底解説


借金問題

執筆者 弁護士 古山 隼也 (こやま しゅんや)


  • 大阪弁護士会所属 登録番号 第47601号

略歴

清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁(平成18年まで勤務)/京都大学法科大学院卒業/古山綜合法律事務所 代表弁護士

講演・メディア出演・著書

朝日放送「キャスト」/弁護士の顔が見える中小企業法律相談ガイド(弁護士協同組合・共著)/滝川中学校 講演「インターネットトラブルにあわないために-トラブル事例を通じて-」


大阪市職員、大阪・京都の法律事務所の勤務経験を活かし、法律サービスの提供を受ける側に立った分かりやすい言葉で説明、丁寧なサポートで、年間100件以上の問題解決をおこなっています。

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自己破産すると家族はどうなる?家族への影響を徹底解説


自己破産を検討する際、「家族に迷惑がかかるのでは?」という不安が最大の悩みとなりがちです。

結論から言えば、自己破産は個人の手続きであるため、家族名義の財産が処分されたり、家族の信用情報(ブラックリスト)に傷がついたりする「直接的な影響」はありません。

しかし、持ち家や車を失うことによる「生活環境の変化」や、家族が「保証人」になっている場合に返済義務が移るなど、重大な「間接的な影響」が発生するケースがあります。

この記事では、自己破産が家族に与える影響の「ある・なし」を明確に分け、家族への影響を最小限に抑える具体的な対処法まで徹底解説します。

1. 自己破産が家族に与える可能性のある影響

 

1-1. 家や車などの財産処分と家族の生活への影響


自己破産が家族に与える「間接的な影響」は、主に以下の6点です。

  • 家や車などの財産処分による生活環境の変化
  • 家族が保証人になっている場合の返済義務の発生
  • 家族カードが使えなくなる
  • 子ども名義の預貯金や学資保険が処分されるリスク
  • 生命保険などの解約による保障の喪失
  • 引っ越しによる通学・通勤への影響


これらの影響は、申立人の財産の状況や契約内容によって発生する場合としない場合があります。最も重要なのは、具体的なリスクを正しく理解し、専門家に早めに相談することです。

以下で各影響について詳しく解説します。

1-2. 家族が保証人となっている場合の返済義務


ご家族が借金の「連帯保証人」または「保証人」になっている場合、注意が必要です。
申立人本人が自己破産によって返済義務を免除されても、保証人の返済義務はなくなりません。

債権者は、本人に代わって保証人に対して、残りの債務全額の一括返済を請求してくるのが一般的です。

これはご家族にとって極めて大きな金銭的負担となり、もし返済できなければ、保証人となったご家族自身も債務整理(自己破産や任意整理など)を検討せざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。

特に、住宅ローンや奨学金など、高額な借金の保証人になっているケースは深刻です。
ご家族に迷惑をかけないためにも、保証人の有無の確認は必要です。


自己破産手続きを検討する段階で、保証人である家族には正直に事実を伝え、今後の返済方針を弁護士などの専門家を交えて協議することが極めて重要です。

 

1-3. 家族カード・クレジットカードが使えなくなる可能性


自己破産をすると、申立人名義のクレジットカードはすべて強制解約となります。
これは、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されるためです。

注意が必要なのは「家族カード」です。
家族カードは、本会員の信用に基づいて発行されているため、本会員である申立人が自己破産すると、それに紐づく家族カードも自動的に利用できなくなります。
なお、家族カードを利用するご家族が信用情報に登録されることがありません。

公共料金や携帯電話料金、サブスクリプションサービスなどの支払いを家族カードでおこなっている場合、急に使えなくなるため、意図せず支払いを滞納してしまうリスクがあります。

家計管理の仕組みが崩れ、ご家族全体で新たな支払い方法(デビットカードや口座振替など)を早急に検討・変更する必要があります。


手続きを開始する前に、どの支払いをどのカードでおこなっているかを確認し、代替手段を準備しておくことで、生活の混乱を最小限に防げます。

 

1-4. 子ども名義の預貯金・学資保険が処分されるリスク


自己破産の手続きでは、財産が誰の名義であるかだけでなく、その財産が実質的に誰のものかが問われます。

たとえ名義が子供のものであっても、その口座のお金の原資が破産する親の収入であり、通帳や印鑑も親が管理しているような場合は、「名義を借りただけの親の財産(名義預金)」と判断され、処分の対象となる可能性が非常に高いです。

これは、財産隠しを防ぐための重要な判断基準です。
もし財産隠しが発覚した場合、借金が免除されない(免責不許可)だけでなく、詐欺破産罪として刑罰に問われる恐れがあります。

同様に、学資保険についても、保険料を支払っていたのが破産者本人である場合、解約した際に戻ってくる解約返戻金が20万円を超えると、保険を解約して返戻金を債権者への配当に充てるよう求められることがあります。


お子様の将来のための大切な資金を守るためにも、自己破産にあたり対応をどうするべきか弁護士に相談することが重要です。

1-5. 保険の解約による家族の不安

 

生命保険や個人年金保険といった積立型の保険は、解約返戻金が財産と見なされます。

解約返戻金の額が20万円を超える場合、原則としてその保険契約は解約し、返戻金を破産財団に組み入れる必要があります。


保険が解約されると、万が一の際の保障がなくなり、ご家族の将来に対するセーフティネットが失われることへの心理的な不安は大きいでしょう。

どうしても保険契約を継続したい場合、「契約者貸付」を利用して解約返戻金を20万円以下にする方法や、裁判所に事情を説明して自由財産の拡張を認めてもらう方法など、いくつかの対処法が考えられます。

また、裁判所からの指示で、学資保険の解約返戻金相当額を積み立てて、債権者へ配当することで解約をしなくても済む場合もあります。

ただし、これらの判断は複雑なため、必ず専門家に相談してください。

状況によっては、保険を残せる可能性がある個人再生や任意整理といった他の債務整理を検討することも一つの選択肢です。

1-6. 引っ越しや生活環境の変化に伴う可能性


持ち家や車を手放すことになった場合、引っ越しや通勤・通学手段の見直しが避けられません。

これは、生活全般にわたる大きな変化であり、特に子供への影響は慎重に考慮すべきです。

学校の転校、友人関係の変化、通学時間の増加などは、お子様にとって大きなストレスとなり得ます。
また、配偶者の通勤形態が変わり、家計の負担が増える可能性もあります。

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2. 自己破産しても家族に影響が及ばないケース


自己破産は申立人個人の手続きであり、家族に「直接的な影響」が及ばない範囲も明確に定められています。

主に以下の点については、影響がありません。

  • 家族名義の財産は処分されない(特有財産)
  • 家族の将来(就職・進学・結婚)に影響はない
  • 家族の信用情報に登録されない(保証人でない場合)
  • 家族の戸籍、住民票への自己破産の事実は記載されない
    (そもそも破産者においても記載されない)
  • 生活必需品一定額以下の現金(自由財産)に影響はない


ただし、裁判所は生計の実態を調査するために、家族から給与明細や公共料金の領収書の提出などを求めることはあります。
家族の誤解を招かないよう、正確な情報開示が重要です。

2-1. 名義が分かれている財産は処分の対象外


ご家族が自身の収入や資産(例:親からの相続財産など)で購入・形成した財産であれば、たとえ破産者と同居していても、処分の対象にはなりません。

具体的には、以下のような家族の財産は原則として守られます。

  • 配偶者が結婚前から所有していた預貯金や不動産(特有財産)
  • 配偶者が自身の給料から購入した車や貴金属
  • ご家族が親などから相続した財産


ただし、注意が必要です。
その財産の購入資金が破産者の収入から出ていたり、実質的に破産者が管理・使用していたりすると、「実質的には本人の財産」と判断され、処分の対象となるリスクがあります。

例えば、専業主婦の配偶者名義の口座に、破産する夫の給料から多額の積立が行われている場合などがこれに該当します。
財産の帰属があいまいな場合は、すみやかに弁護士に相談してください。

2-2. 家族の将来(就職・進学・結婚)に法的な影響はない


自己破産をした事実が、ご家族の将来に法的な不利益を与えることはありません。

  • 信用情報への影響
    信用情報機関に事故情報が登録されるのは破産者本人のみです。ご家族の信用情報に傷がつくことはないため、ご家族が新たにクレジットカードを作成したり、ローンを組んだりする際の審査に直接的な影響はありません。

  • 就職・転職
    ご家族の職業選択の自由が制限されることは一切ありません。

  • 進学・結婚
    お子様の進学や結婚において、親が自己破産したことが法的な障害となることはありません。


ただし、お子様が奨学金を借りる際に、親が連帯保証人になることはできなくなります。

 

しかし、その場合でも「機関保証制度(保証料を支払うことで保証機関に保証人になってもらう制度)」を利用すれば奨学金を借りることは可能です。

2-3. 別居している家族や親族には基本的に影響なし


別居しているご家族や親族(親、兄弟など)には、自己破産の影響が直接及ぶことはほとんどありません。

借金の保証人になっていない限り、たとえ親子や兄弟であっても、法律上の返済義務は発生しません。

裁判所からの郵便物は原則として住民票上の住所に届きます。
そのため、別居しているご家族の住所に住民票を置いたままの場合、手続きに関する書類が届いてしまう可能性があります。

ご家族に心配をかけないよう、事前に事情を話しておくか、弁護士に依頼して送付先を法律事務所宛にしてもらうと安心です。

なお、弁護士に依頼した場合には、法律事務所が連絡窓口となります。

2-4. 家財道具・生活必需品は処分されない


法律では、生活に必要不可欠な財産は「差押禁止財産」として保護されています。
そのため、自己破産をしても、明日からの生活に困るような事態にはなりません。

これは法律に定められており、具体的には以下のようなものが該当します(破産法第34条3項、民事執行法第131条)。

  • 生活に必要な家具(ベッド、タンスなど)
  • 家電(冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンなど)
  • 衣類、調理器具、食器
  • 仕事に不可欠な道具
    ※ 但し、リース商品や割賦販売で購入した車両や動産の場合、債権者が商品を引き揚げることになります。


これらの家財道具は、ご家族と共同で使っているものがほとんどだと思われますが、そのまま手元に残して生活を続けることが可能です。

また、法律で定められた範囲の現金(原則として99万円以下の現金)も「自由財産」として手元に残すことができます。
なお、裁判所の運用により、現金以外に保険契約の解約返戻金や退職金、賃貸借物件の敷金、退職金の支給見込み金額などの財産の合計金額99万円以内までは自由財産として取り扱う場合もあります(自由財産の拡張)。

これらの判断は裁判所の運用によっても異なるため、必ず弁護士などの専門家に相談し、ご自身の状況でどこまで財産を残せるか確認することが重要です。

3. 家族にバレずに自己破産することは可能か

 

同居しているご家族に完全に秘密で手続きを進めるのは極めて難しいのが実情です。

しかし、「家族に心配をかけたくない」「知られたくない」という理由から、内緒で自己破産をしたいと考える方もいらっしゃいます。

自己破産を秘密に進めたい背景には、ご家族との衝突を避けたい、後ろめたい、恥ずかしいという切実な悩みがあるかもしれません。
しかし、裁判所や債権者からの郵送物、手続きに必要な書類の準備などを通じて、ご家族に知られる可能性はあります。

多くの場合、どこかの段階で協力が必要となります。
どの程度のプライバシーを保てるかについては、依頼する弁護士や司法書士に率直に相談してみましょう。

3-1. 同居家族に知られやすい場面とは


同居しているご家族に自己破産の事実が知られやすいのは、主に以下のような場面です。

  • 裁判所からの郵送物
    申立書や破産決定・免責決定の通知など、重要な書類が自宅に郵送されます。
    ご家族が郵便物を受け取ることで発覚する可能性があります。

  • 家計収支表の作成
    裁判所に提出するため、世帯全体の収入と支出をまとめた「家計収支表」を作成する必要があります。
    この際、同居家族の給与明細や源泉徴収票などの提出を求められるため、協力なしに進めることは困難です。

  • 財産の処分
    自宅や車が処分されることになれば、当然ご家族に知られることになります。


なお、破産すると官報(かんぽう)と呼ばれる国の機関紙に、住所と氏名が掲載されます。


ただ、官報を日常的に確認している人はほとんどいないため、官報から自己破産の事実が知られる可能性は極めて低いでしょう。

3-2. バレずに済む可能性がある具体例


ご家族に知られずに手続きを進められる可能性があるのは、以下のような限定的なケースです。
なお、下記のケースであれば必ずバレずに済むというわけではありません。

  • 家族と別居し住民票を移している
    裁判所や弁護士からの連絡先を自身の住所に限定し、書類のやり取りもそこで完結させられる場合。

  • 生計が完全に独立している
    同居していても、家計が完全に別で、お互いの収入や支出を全く関知していないような場合。
    この場合、家計収支表の作成で家族の協力を必要としない可能性があります。

  • 弁護士事務所でのやり取り
    弁護士に依頼し、連絡を電話やメールに限定してもらい、書類の受け渡しもすべて事務所でおこなうように依頼できる場合。
    また、自己破産手続きに関する書類は、基本的に代理人弁護士宛に届くため安心です。

 

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4. 自己破産以外の債務整理で家族への影響を抑える方法


もし自己破産による財産処分などの影響をどうしても避けたい場合、他の債務整理を検討することも一つの選択肢です。

自己破産は、原則すべての借金の返済義務が免除される強力な手続きです。
しかし、その分、財産処分や官報公告といったデメリットもあります。

一方、任意整理や個人再生は、返済を継続することが前提ですが、ご家族への影響をより少なく抑えられる可能性があります。

どの手続きが最適かは、借金の総額、収入、財産の状況、そしてご家族の希望によって大きく異なります。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の状況に最も合った方法を選択しましょう。

参照 債務整理の主な手続き 比較表

項目
自己破産
個人再生
任意整理
手続きの概要
裁判所の許可を得て、原則全ての借金の支払義務を免除してもらう手続き。
裁判所の許可を得て、借金を大幅に減額(約1/5~1/10)し、原則3年で分割返済する手続き。
裁判所を通さず、貸金業者と直接交渉し、主に将来利息のカットや分割回数の見直しを合意する手続き。
手続きの対象
全ての借金が対象。
一部の借金だけを除外することは原則不可。
全ての借金が対象。
ただし「住宅ローン特則」を利用すれば、住宅ローンはそのまま支払いを続け、家を残せる場合がある。
交渉する相手(業者)を自由に選べる。
保証人がいる借金や、自動車ローンなどを除外して手続き可能。
裁判所の関与
必須。
申立てから免責許可まで、裁判所が全面的に関与する。
必須。
申立てから再生計画の認可まで、裁判所が全面的に関与する。
関与しない。
あくまで当事者間の私的な交渉。
財産処分
原則、全ての高価な財産が処分対象。(目安20万円以上)
家や車、解約返戻金のある保険などが対象となる。(自由財産を除く)
原則、財産を処分する必要はない。
ただし、所有している財産の総額(清算価値)以上の金額を返済する必要がある。(清算価値保障原則)
財産を処分する必要はない。
ただし、ローン返済中の車などは、そのローンを任意整理の対象にすると引き上げられる。
保証人への影響
保証人に一括請求がいく。
本人の支払義務は免除されるが、保証人の義務はなくならないため、債権者は保証人に請求する。
保証人に一括請求がいく。
自己破産と同様、保証人が残りの債務全額を請求される。
手続きの対象から保証人がついている借金を除外すれば、影響はない。
もし対象に含めると、保証人に一括請求がいく。
官報掲載
掲載される。
(破産手続開始時と免責許可時の2回)
掲載される。
(再生手続開始時など計3回)
掲載されない。
資格・職業の制限
手続き期間中、一部の資格や職業に就けなくなる場合がある。(弁護士、警備員、保険外交員など)
免責許可が下りれば制限は解除される(復権)。
制限はない。
制限はない。
信用情報への登録
(ブラックリスト)
登録される。(約5~10年)
登録される。(約5~10年)
登録される。(約5年)

4-1. 任意整理で家族に迷惑をかけにくいケース


任意整理は、裁判所を介さず、債権者と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長(通常3~5年)を目指す手続きです。

裁判所を通さないため、官報に掲載されることがなく、自己破産のように公になるリスクが低いのが最大のメリットです。

また、整理する債務を選べるため、保証人がついている債務を対象から外すことで、保証人であるご家族に迷惑がかかるのを防ぐことができます。

ただし、任意整理は元金の減額は期待できません。
あくまで分割で返済していく手続きなので、安定した収入があることが前提となります。

4-2. 個人再生で自宅を残せる可能性


個人再生は、裁判所に申立てを行い、借金を大幅に(約5分の1~10分の1に)減額してもらい、その減額された額を原則3年で分割返済していく手続きです。

個人再生の最大のメリットは、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用できる点です。
この制度を使えば、住宅ローンはそのまま返済を続け、持ち家を処分せずに他の借金だけを大幅に減額することが可能です。
ご家族の住環境を変えずに生活再建を目指せるため、持ち家がある方にとっては非常に有効な選択肢です。

ただし、個人再生も裁判所を介する手続きであり、官報に掲載されます。
また、継続的な返済が必要なため、安定収入が条件となります。

5. 家族への迷惑を最小化するための注意点


自己破産の手続きを進める上で、ご家族への負担を最小限にするためには、絶対に守るべき注意点があります。


良かれと思っておこなった行動が、逆に事態を悪化させる可能性もあるため、慎重に行動しましょう。

5-1. 財産を隠さない・虚偽申告をしない


ご家族名義の口座にお金を移したり、財産を安く譲渡したりする「財産隠し」は絶対にしてはいけません。

これらの行為は、免責不許可事由(破産法第252条1項1号)に該当し、最悪の場合、借金の返済義務が免除されないという結果を招きます。
それだけでなく、「詐欺破産罪」という犯罪行為として刑事罰の対象となる可能性すらあります。

また、破産管財人が、財産を受け取ったご家族に対して、その財産を返すよう求める訴訟を起こす可能性があります。

ご家族を守るために良かれと思ってとった行動が、結果的に経済的再建の道を閉ざし、ご家族をさらに苦しめることになりかねません。

5-2. 偏頗弁済(へんぱべんさい)を行わない


「家族や親族、親しい友人から借りたお金だけは返したい」という気持ちは自然なものです。
しかし、特定の債権者にだけ優先的に返済する行為(偏頗弁済)は債権者平等の原則に反する、法律上許されない行為です。
また、免責不許可事由(破産法第252条1項3号)に該当します。

偏頗弁済もまた、破産管財人がその返済を無効とし、返済を受けた相手方(ご家族など)に対して、お金を返すよう請求することもあります。
結果として、ご家族にさらなる迷惑をかけることになるため注意が必要です。

5-3. 自己破産を理由とする離婚を検討する際の留意点


経済的な問題が夫婦関係のトラブルに発展することは少なくありません。
しかし、自己破産の手続き直前に離婚し、配偶者に財産を渡す「財産分与」を行うことには大きなリスクが伴います。

その財産分与が、実質的な財産隠し(財産分与に名を借りた不当な財産処分)であると裁判所に判断された場合、破産管財人がその行為を否認し、配偶者に渡した財産を取り戻すことがあります(否認権の行使)。

参照 離婚の財産分与で否認権の対象となりやすいケース

  • 相場を大幅に超える慰謝料の支払い
  • 居住用不動産以外の過大な財産分与


離婚を検討する場合でも、そのタイミングや財産分与の方法については、事前に弁護士に相談し、法的に問題のない形で進めることが重要です。

5-4. 専門家へ相談し、家族へ正直に話す


ここまで様々な注意点を解説してきました。
ご家族への影響を最小化するために最も重要なことは、一人で抱え込まずに弁護士や司法書士などの専門家に相談し、適切なタイミングでご家族に正直に話すことです。

専門家に相談すれば、法的なリスクを回避できるだけでなく、ご自身の状況でご家族にどのような影響が出るのか、具体的な見通しを得ることができます。
その上でご家族に説明すれば、感情的な対立を避け、冷静な話し合いがしやすくなります。

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6. よくある質問:家族への影響に関するQ&A


自己破産とご家族に関する、よくあるご質問にお答えします。

6-1. 子どもの進学や結婚に不利益はある?


A. 法的な不利益は一切ありません。
自己破産はあくまでご本人の経済的な問題であり、その事実が戸籍や住民票に記載されることはありません。
したがって、お子様の入学審査や就職活動、結婚において、親の自己破産が法的な障害となることは考えにくいです。

6-2. 近所の人や職場に自己破産が知られてしまうことはある?


A. 知られる可能性は極めて低いです。
自己破産をすると、その事実が国の機関紙である「官報」に掲載されます。
しかし、一般の方が日常的に官報を読むことはまずありません。
また、会社に自己破産の報告義務もありません(ただし、一部の職業選択に一時的な制限がかかる場合は報告が必要なケースもあります)。
通常、ご自身から話さない限り、周囲に知られるリスクは低いと言えるでしょう。

6-3. 自己破産手続きで家族が同席する場面はある?


A. 法的に同席を義務付けられることはありません。
自己破産の手続きは、基本的にご本人と代理人である弁護士などでおこないます。
裁判所での面談(審尋)などにご家族が同席する必要はありません。

7. まとめ


自己破産がご家族に与える影響は、財産の状況や保証人の有無で異なりますが、正しい知識で対処すれば影響を最小限に抑えられます。

  • 影響が及ぶ可能性がある点
    ・本人名義の高価な財産(家、車など)は処分される。
    ・家族が保証人の場合、返済義務が移る。
    ・本人の自己破産で、家族カードも使えなくなる。

  • 影響が及ばない点
    ・家族自身の財産は処分されない。
    ・家族の信用情報(ブラックリスト)には登録されない。
    ・家族の就職や結婚に法的な不利益はない。


借金の悩みを解決する方法は、自己破産だけではありません。持ち家を残せる可能性がある個人再生や、周囲に知られにくい任意整理など、他の選択肢もあります。

最終的にどの方法を選ぶべきか、そしてご家族への影響をどう最小化するかは、専門家のアドバイスなしに判断するのは非常に困難です。
一人で抱え込まず、まずは信頼できる弁護士の無料相談などを利用し、最善の解決策への第一歩を踏み出してください。

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