自己破産で連帯保証人はどうなる?迷惑をかけない対処法と注意点を徹底解説
借金問題
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自己破産で連帯保証人はどうなる?迷惑をかけない対処法と注意点を徹底解説
自己破産は、多重債務などの借金問題を解決するための手段のひとつです。
しかし、自己破産は債務者本人だけでなく、連帯保証人にも大きな影響を及ぼします。
「自分が自己破産したら、親や友人に迷惑がかかる?」
「連帯保証人にだけは、迷惑をかけずに済む方法はあるの?」
このような不安は、借金問題を解決しようとする際に多くの方が抱える悩みです。
この記事では、自己破産が連帯保証人に与える影響と、その負担をできる限り軽減するための具体的な対処法を、法律の専門家が徹底的に解説します。
1. 自己破産と連帯保証人の基礎知識
自己破産は、破産法に基づき、返済不能となった債務者の支払い義務を裁判所の許可(免責許可決定)によって免除してもらう法的な手続きです。
しかし、この免責の効力は、あくまで自己破産を申し立てた本人(主債務者)に限定されます。
連帯保証人がいる場合、その保証債務まで自動的になくなるわけではありません。
主債務者が免責されても、連帯保証人の支払い義務はそのまま残ります。
この点を理解しないまま手続きを進めると、ある日突然、連帯保証人のもとに銀行などの債権者から多額の請求が届き、深刻なトラブルに発展しかねません。
そうした事態を避けるためにも、まずは制度の基本をしっかりと押さえましょう。
1-1. 連帯保証人と保証人の違いとは?
「保証人」と「連帯保証人」、似ている言葉ですが、その責任の重さは全く異なります。
特に連帯保証人は、実質的に主債務者本人と同等の重い責任を負います。
通常の「保証人」には、民法で以下の3つの権利が認められています。
参照 保証人の3つの権利
一方、「連帯保証人」には、これらの権利が一切認められていません。
そのため、債権者は主債務者の返済状況や財産の有無にかかわらず、いきなり連帯保証人に対して「借金の全額を一括で支払ってください」と請求することが可能です。
この点が、連帯保証人の責任が極めて重いと言われる最大の理由です。
1-2. 連帯保証が利用される代表的なケース(住宅ローン・奨学金など)
連帯保証は、私たちの生活の身近な場面で利用されています。
- 住宅ローン
高額な借入れのため、金融機関がリスクを軽減するために連帯保証人を求めることがあります。
特に、夫婦の収入を合算してローンを組む「ペアローン」や「収入合算」では、一方がもう一方の連帯保証人になるケースが一般的です。 - 奨学金
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金では、親などの親族を連帯保証人とする「人的保証」が選択肢の一つとなっています。 - 事業性融資
中小企業が銀行などから事業資金を借り入れる際、経営者個人が会社の連帯保証人となることが多くあります。 - 賃貸借契約
家賃の滞納に備え、親族などを連帯保証人として求められる場合があります。
これらの契約は、いずれも生活の基盤に関わる重要なものです。
しかし、万が一主債務者が返済不能に陥った場合、連帯保証人にその重い負担が直接のしかかるリスクがあります。
自己破産の前に、契約書で保証人の有無を確認することをおすすめします。
2. 主債務者が自己破産した場合に連帯保証人が負うリスク
連帯保証人にとって、具体的にどのようなリスクがあるのかを見ていきましょう。
2-1.連帯保証人に返済義務が残る理由
自己破産による免責許可決定の効力が連帯保証人に及びません(破産法第253条2項)。
債権者から見れば、主債務者から回収できなくなるリスクに備えて、わざわざ連帯保証人を立てています。
そのため、主債務者が自己破産したからといって、連帯保証人への請求権まで失われることにはなりません。
法的には、連帯保証人の支払い義務は、主債務者の自己破産後も何ら変わらずに存続します。
2-2. 連帯保証人に一括請求が及ぶタイミング
債権者から連帯保証人への請求は、いつ、どのように行われるのでしょうか。
多くの場合、債権者は、主債務者から弁護士を通じて自己破産の準備に入った旨の受任通知が届いた時点で、連帯保証人への請求準備を開始します。
主債務者本人への取り立てができなくなるため、すぐに保証契約に基づき連帯保証人へ連絡を取ります。
請求方法は、多くの場合、残っている借金全額(元本+遅延損害金)の一括請求です。
分割払いが認められる場合もありますが、それはあくまで債権者との交渉次第であり、法的な権利ではありません。
突然、数百万円、数千万円もの一括請求を受け、多くの連帯保証人が返済不能のリスクに直面することがあります。
2-3. 連鎖破産の可能性
主債務者の自己破産をきっかけに、連帯保証人もまた債務整理をせざるを得なくなる状況を「連鎖破産」と呼ぶことがあります。
連帯保証人は、主債務者が支払えなくなった借金を丸ごと引き継ぐことになります。
多くの方において、自身の生活費を維持しながら、予期せぬ多額の借金を返済していくことは極めて困難です。
特に、親子や夫婦間で連帯保証人になっている場合、家計が一体であるため、一方が自己破産すると、もう一方も自己破産せざるを得なくなり、家計が共倒れになるリスクが非常に高くなります。
この連鎖破産は、自己破産がもたらす最も深刻なリスクの一つです。
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3. 連帯保証人に迷惑をかけないためにできること
自己破産を選択せざるを得ない状況でも、連帯保証人への影響を最小限に抑えるために、事前にできることがあります。
3-1. 破産申立て前に連絡すべき内容とタイミング
最も重要なことは、弁護士に相談し、自己破産の方針が固まったら、すぐに連帯保証人に連絡し、誠実に説明することです。
タイミング
弁護士に依頼し、債権者へ受任通知を送る前が理想です。
事後報告は、人間関係に深刻な亀裂を生む原因となります。
伝えるべき内容
- ✓ 自己破産をせざるを得なくなった経緯(正直に、誠実に)
- ✓ 借金の総額と、連帯保証してもらっている保証債務の金額
- ✓ 今後、連帯保証人に請求がいく可能性が高いこと
- ✓ 連帯保証人自身も返済が難しい場合の対処法(弁護士への相談など)があること
- ✓ 心からの謝罪
事前に伝えることで、連帯保証人も心の準備ができ、今後の対応を検討する時間を確保できます。
3-2. 求償権とは?知っておくべき権利と現実
連帯保証人が主債務者に代わって返済した場合、その返済した分を主債務者に対して「返してください」と請求する権利があります。
これを求償権(きゅうしょうけん)と呼びます。
しかし、主債務者が自己破産した場合、この求償権も免責の対象となります。
つまり、連帯保証人が代わりに全額返済したとしても、自己破産した主債務者に対して法的に返済を求めることはできなくなります。
そのため、自己破産の手続きにおいて、求償権が連帯保証人の負担を直接的に減らす手段となることは、残念ながら現実的ではありません。
3-3. 任意整理への切り替えによる影響軽減
自己破産が連帯保証人に与える影響が大きすぎると判断した場合、任意整理手続きを検討するのもひとつです。
任意整理手続きは、裁判所を通さず、債権者と直接交渉し、将来利息のカットや分割払いの減額を求める方法です。
連帯保証人がついている債務を交渉の対象から外すことで、連帯保証人への影響を回避できる可能性があります。
なお、自己破産は、特定の借入だけを整理の対象から外すということができません。
3-4.個人再生の場合における保証人への影響
自己破産、任意整理以外に「個人再生」という裁判所を通しておこなう債務整理の方法があります。
個人再生は、裁判所の認可を得て、借金を大幅に減額(通常5分の1~10分の1程度)してもらい、原則3~5年で分割返済する方法です。
ただ、実際には、債権者は主債務者が個人再生を申し立てた時点で、すぐに連帯保証人に請求を開始することがほとんどです。
主債務者からの返済が減額されることが確実になるため、債権者は保証人から残額を回収しようとします。
そのため、保証人に影響を与えないようにするには「任意整理」による方法を取ることになります。
ただし、基本的に任意整理は、継続して返済をおこなうことになるため、安定した収入があることが必要です。
4. 配偶者や家族が連帯保証人の場合の注意点
連帯保証人が最も身近な配偶者や親、兄弟である場合、その影響はより深刻かつ複雑になります。
4-1. 共倒れを防ぐには?離婚や財産分与への影響も確認
夫婦の一方が自己破産し、もう一方がその連帯保証人である場合、家計が破綻し「共倒れ」になるリスクが非常に高くなります。
また、自己破産をきっかけに離婚を考える場合にも注意が必要です。
離婚によって夫婦関係が解消されても、連帯保証人としての契約が無効になるわけではありません。
離婚後も支払い義務は残り続けます。
財産分与でローン返済中の自宅を財産分与として受け取ったとしても、元配偶者の返済が滞れば、債権者から一括請求を受けるリスクがあります。
離婚の際には、弁護士と慎重に協議する必要があります。
4-2. 家族全員が同時に債務整理を検討するケース
主債務者の自己破産により、連帯保証人である家族も返済不能に陥ることが明らかな場合、家族が同時に、あるいはタイミングを合わせて債務整理をおこなうことも選択肢の一つです。
同じ弁護士に依頼することで、家計全体の状況を把握した上で、それぞれに最適な手続き(自己破産、個人再生など)を選択し、一体的に進めることができます。
これにより、手続きの費用や手間を抑え、家族全体の生活再建に向けたスムーズなスタートを切ることが可能になります。
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5. 優先返済をしてもよい?偏頗弁済のリスクを知ろう
「連帯保証人にだけは迷惑をかけたくない」という思いから、連帯保証人がついている借金だけを優先的に返済してしまうケースがあります。
しかし、この行為は偏頗弁済(へんぱべんさい)とみなされ、自己破産手続きにおいて極めて深刻な問題を引き起こす可能性があります。
5-1. 連帯保証人付きの借金だけ先に返すことは違法?
偏頗弁済が直ちに「違法」として刑事罰の対象になるわけではありません。
しかし、自己破産制度における債権者平等の原則に反する行為です。
すべての債権者は、その債権額に応じて平等に扱われなければなりません。
特定の債権者(この場合は連帯保証人がついている借金の貸主)だけが利益を得るような返済は、この原則を破るものです。
この偏頗弁済が発覚した場合、裁判所は免責不許可事由(破産法第252条1項3号)に該当すると判断され、借金の免責が認められない可能性があります。
そうなると、自己破産を申し立てた意味がなくなってしまいます。
連帯保証人を想っての行動が、結果的に誰のためにもならない最悪の結果を招く恐れがあるのです。
借金の返済を停止した後は、どの債権者に対しても返済をおこなわず、速やかに弁護士に相談してください。
6. 自己破産後も連帯保証人になれる?審査や信用情報の実態
自己破産をすると、その情報が個人信用情報機関(JICC、CIC、KSC)に「事故情報」として登録されます(いわゆるブラックリストの状態)。
6-1. 自己破産歴が連帯保証審査に与える影響
信用情報に事故情報が登録されている期間(約5~10年)、新たにローンを組んだり、クレジットカードを作成したりすることは極めて困難になります。
同様に、連帯保証人になるための審査も、まず通りません。
金融機関にとって、過去に自己破産した人は「返済能力に重大な懸念がある」と判断されるため、保証人としての適格性はないとみなされます。
親族などから頼まれたとしても、事故情報が消えるまでは連帯保証人になることはできないと考えておくべきです。
7. 連帯保証人に関するよくある質問
自己破産と連帯保証人について、よくある質問をまとめました。
Q. 連帯保証人に内緒で自己破産できる?バレるタイミングは?
A. 内緒で手続きを進めることは事実上不可能です。
弁護士が債権者に受任通知を送付した時点で、債権者は連帯保証人に請求を開始するため、遅くともそのタイミングで必ず知られることになります。
隠し通そうとすることは、人間関係を破壊するだけで何の利益もありません。
可能であれば、事前に正直に話しましょう。
Q. 住宅ローンや奨学金の連帯保証人にはどう影響する?
A. 原則として、残額の一括請求を受けます。
住宅ローンや奨学金は高額なため、連帯保証人が一括で返済することは極めて困難です。
多くの場合、連帯保証人自身も債権者と分割返済の交渉をしたり、債務整理を検討したりする必要が出てきます。
Q. 家族が連帯保証人の場合、財産差押えから守る方法はある?
A. 残念ながら、連帯保証人である以上、ご自身の財産が差し押さえられることから法的に守る直接的な方法はありません。
差押えを回避するには、連帯保証人自身が債務整理手続きをおこなう必要があります。
Q. 連帯保証人が支払えない場合に取れる選択肢は?
A. 連帯保証人自身も債務整理を検討する必要があります。
連帯保証人も一人の債務者として、弁護士に相談し、自身の収入や財産の状況に応じた最適な債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)を選択することになります。
決して一人で抱え込まず、早期に専門家に相談することが重要です。
8. まとめ~最適な債務整理の選択と専門家への相談が重要
自己破産は借金問題を解決する有効な手段ですが、連帯保証人がいる場合はその支払い義務がなくならないという大きな注意点があります。
- 自己破産すると、連帯保証人に一括請求がいく。
- 迷惑をかけないためには、手続き前に必ず正直に話し、謝罪することが大切。
- 連帯保証人がついている借金だけを優先返済する「偏頗弁済」は絶対に避ける。
- 連帯保証人への影響を回避したい場合は「任意整理」を検討するなど、状況に応じた手続きを選ぶ必要がある。
- 連帯保証人自身も支払えない場合は、債務整理を検討する。
借金問題と連帯保証人の問題は、法律的な知識と交渉経験がなければ、最適な解決は困難です。
何よりもまず、弁護士などの専門家に相談をご検討ください。
あなたと、あなたの大切な連帯保証人にとって、最もダメージの少ない方法を見つけ出すことが、再スタートへの確実な一歩となります。
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